資産税関連記事一覧

ウェブで相続人申告登記が可能に 提供:エヌピー通信社


 法務省は4月から義務となる不動産の相続登記を促すため、義務化と同時に新設された「相続人申告登記」の手続きをウェブ上でできるよう、省令を改正しました。
 今回の義務化については、今後発生する相続だけでなく、過去に相続した全ての不動産が対象となっています。正当な理由なく申請を怠ったときには10万円以下の過料が科されます。

 登記義務化と同時に新設された「相続人申告登記」は、相続人が法務局に対して自分が相続人であると申し出ることで、申請義務を履行したとみなす制度。他の相続人の同意を必要とせず単独で申請でき、法定相続分の割合の確定も不要なため、申請義務をとりあえず履行しておくための制度といえます。

 同制度について小泉龍司法務大臣は「登記は日常生活で触れない作業なので、心理的なハードルが高かったり手続きが煩雑に感じてしまったり、そういう色々な改善点がある」と、オンライン手続きを可能にした理由を説明しました。提出が必要な戸籍関係書類を簡素化するなどの見直しも同時に行われています。

 またドメスティック・バイオレンス(DV)の被害者らに配慮し、証明書類に避難先の住所と異なる連絡先を載せる対応も取られました。登記の証明書類には名義人の氏名や住所が記載され、第三者の閲覧が可能なため、DVやストーカーの被害者が加害者に個人情報を知られるリスクが指摘されていました。そのため証明書類に、弁護士や被害者支援団体の住所などを記載することが可能となっています。加えて結婚などで名字が変わっても名義人を識別できるよう、旧氏を併記することも認めます。

 


<情報提供:エヌピー通信社>


 

2024年04月08日

相続登記の義務化 認知度が低迷

 4月に相続登記が義務化されることについて、小泉龍司法務大臣は2月中旬、「国民に十分に幅広く認知されていない」と述べ、周知が進んでいない現状への危機感を示しました。今後、よりターゲットを絞り込んだPRなどに取り組み、認知度向上に努めるそうです。

 所有者が分からないまま放置されている土地問題を解決するため、今年4月にスタートするのが相続登記の義務化制度。相続による土地の取得を知ってから3年以内の登記申請を義務付け、正当な理由なく怠ったときには10万円以下の過料を科します。それでも10年間届出がなければ法定割合で分割したとみなし、それぞれの所有者に固定資産税や管理義務を課します。また4月以降に発生する相続だけでなく、これまでに発生した相続や住所変更も対象に含まれ、現時点で登記が行われていない全ての土地で登記が義務化されます。
 同制度に関する国の認知度調査では、「(相続登記が義務化されることを)詳しく知っている」と「大体知っている」の合計が23年度は32%(22年度33%)にとどまりました。

 こうした状況を受けて小泉大臣は、「(周知が進まないと)本来の意味でのこの制度の趣旨が生かされない」とした上で、「50代から60代をターゲットにした、相続あるいは遺産、資産形成、そういったものに関心を持つ世代をターゲットにする方法を、プロフェッショナルの知恵も借りて何とか編み出していきたい」と、より対象を絞り込んだPRに取り組んでいく方針を示しました。


<情報提供:エヌピー通信社>

 

2024年04月01日

3月から相続手続きがラクに! 提供:エヌピー通信社

 相続の手続きはいろいろと大変です。相続人を確定させるためには、亡くなった人の出生から死亡までの全ての戸籍謄本をそろえる必要があります。具体的には、まずは死亡した時の本籍地で最新の戸籍謄本を取り、その情報を基にひとつ前の戸籍謄本を取ります。またそれを基にひとつ前の戸籍を取り、これを繰り返して、出生までさかのぼるというわけです。遠方であれば郵便で取り寄せる手間もかかり、非常に面倒くさいのが実態です。

 2017年にスタートした「法定相続情報証明制度」は、相続手続にかかる手間を大幅に軽減できるものです。しかし、それでも最初に証明書を作るために、出生から死亡までの戸籍謄本をひと揃い集めなければならない点に変わりはありません。

 この一連の煩雑な手続きを劇的にラクにしてくれそうなのが、3月1日にスタートする「広域交付制度」です。同制度は、全国どこの本籍地の戸籍謄本であっても、出生から死亡までの戸籍謄本一式が最寄りの役所窓口だけで一括で請求できるというもの。これにより、謄本を順にたどってそれぞれの本籍地の役所に手続きを行って……という、これまでかかっていた手間や時間を、大幅に減らすことが可能となります。

 同制度の注意点は、申請を行えるのは配偶者や親、子といった相続人本人のみであることです。税理士や弁護士といった専門家による代行はできない点に注意が必要です。




<情報提供:エヌピー通信社>


2024年02月05日

《コラム》未支給年金の課税関係

 被相続人が死亡するまでの間に受けるべきであった年金で支給されていなかったもの(未支給年金といいます)には相続税が課されません。相続税法の非課税財産と規定されているわけでもないのに、課税されないのは何故でしょうか。
 国税庁のサイトには、遺族の未支給年金請求権に相続税を課さない理由を次のように解説しています。

①最高裁が未支給年金の相続性を否定
 国民年金や厚生年金等の公的年金では、年金受給者が死亡した場合、被相続人と生計を一にしていた3親等内の親族の中から、配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹、それ以外の者の順に未支給年金の受取人を定めています。
 未支給年金の請求について、最高裁は、その相続性を否定し、民法の相続とは別に遺族の生活保障を目的とした立場から遺族に未支給年金の支給の請求を認め、その請求権は相続の対象とはならないと判示したため、国税庁も本来の相続財産として相続税の課税対象とならないと解しています。

②定期金を受給する権利に該当しない
 個人年金や退職年金の受給権については、継続受取人に対し、みなし相続財産として相続税が課されます。年金で受給するか一時金で受給するかは、年金受取人の選択で決めることができ、課税上は年金も一時金も同様に、みなし相続財産となります。
 これに対し、国民年金や厚生年金等の未支給年金は、法律で受給権者と受給する順位が定められ、一方的に付与されるものであり、最初から一時金のみを支給するため、みなし相続財産に該当しません。
 なお、未支給年金の受取人には一時所得として所得税が課されます。

◆遺族への年金には相続税を課さない
 国民年金、厚生年金等の公的年金で支給される遺族年金には、相続税も所得税も課さず、未支給年金にも相続税を課さないことが、それぞれの法律で規定されています。  
 相続税では、通達で遺族年金は課税しない旨が示され、未支給年金は質疑応答事例により、課税しない旨が示されています。
 個人年金や退職年金は、公的年金に上乗せして老後の生活を補てんするので遺産分割の対象となり、相続税が課されるのに対し、遺族年金や未支給年金は、遺族の生活保障のために支給されるので遺産分割の対象とならず、相続税を課さないと考えると理解しやすいかもしれません。

 

(情報提供 ゆりかご倶楽部)

 
2023年07月05日

2023年公示地価 上昇幅が拡大 提供:エヌピー通信社


 国土交通省は3月下旬、今年1月1日時点での地価を公表しました。コロナ禍以降で初めてプラスに転じた昨年に続き、2年連続のプラスとなり、上昇幅も拡大しています。住宅地、商業地、工業地などを含む全用途の全国平均はプラス1.6%でした。ただコロナ禍の影響から脱することで、上昇トレンドにあるエリアと下降を続けるエリアとの二極化が再びあらわになっていて、土地オーナーはエリアの特性に合わせた相続対策が必要となっていきそうです。

 住宅地では、コロナ禍での在宅勤務の需要増から0.5%の伸びとなった前年から上昇幅を拡大し、1.4%のプラスとなりました。特に札幌、仙台、広島、福岡の地方中枢4都市は前年比8.6%増と、三大都市圏の1.7%をはるかに凌ぐ好調ぶりを示しました。

 商業地でも都市部を中心に店舗需要が回復傾向にあり、堅調なオフィス需要やマンション用地需要などから地価の回復傾向がより進んでいます。全国平均は1.8%プラスで、前年の0.4%から大きく伸びました。工業地も前年比3.1%増と、堅実に上昇しています。

 上昇率トップは商業地、住宅地ともに前年に続き北海道北広島市。札幌市内の高騰で隣接する北広島市など周辺の需要が高く、上昇率は住宅地で30%、商業地で28.4%と目覚ましい上昇率を示しました。そのほか10位までを北海道が独占。一方、下落率トップは広島県江田島市の商業地で、マイナス7.6%でした。

 地価が最も高かったのは、17年連続で東京都中央区銀座の山野楽器本店。ここ2年は価格が下落していましたが、今年は3年ぶりにプラスに転じ、1平方メートル当たり5380万円でした。

 今後の地価動向は、ノーマスクが解禁されるなかで新型コロナを巡る状況がどう変化し、国の経済施策がどう講じられるかにかかっているといえそうです。

<情報提供:エヌピー通信社>
2023年04月28日

相続土地国庫帰属制度 法務局で相談開始 提供:エヌピー通信社


 法務省では2月末、全国の法務局・地方法務局の不動産登記部門で「相続土地国庫帰属制度」の対面相談・電話相談を開始しました。法務局の担当者に対し、引き取りを希望する土地が申請条件に合致しているかどうかや審査の大まかな見通しを尋ねることができます。

 相続土地国庫帰属制度は、相続で引き継いだが不要になった土地を国に引き取ってもらえる制度。4月27日からスタートします。制度を利用するには手放したい土地が国の定める基準を満たしている審査を受ける必要があり、①他人による使用が予定される土地、②建物のある土地、③土壌汚染されている土地、④境界が明らかでない土地、⑤通常の管理に過分な費用・労力がかかる土地――などは受け付けないとしています。

 対面相談・電話相談は、インターネット(法務局手続案内予約サービス)での事前予約制で、相談時間は1日1回30分間。法務省は相談時に、土地の情報や相談内容を書き込んだ「相続土地国庫帰属相談票」や、引き取ることができない土地に当てはまらないかどうかを確認できる「チェックシート」とともに、登記事項証明書または登記簿謄本、法務局で取得した地図または公図、法務局で取得した地積測量図、土地の現況・全体が分かる画像や写真などをできるだけ持参することを推奨しています。


<情報提供:エヌピー通信社> 

 


2023年04月07日

《コラム》相続時精算課税の普及が戦略

 


◆相続時精算課税制度は評判悪し
 相続時精算課税制度は、贈与額が2500万円に達するまでは贈与税がかからず、2500万円を超えた部分は贈与税率20%で課税される制度ですが、贈与者死亡時の相続税は、相続時精算課税の適用を受けた受贈財産の価額と相続や遺贈により取得した財産の価額との合算額を基に計算し、既に納めた相続時精算課税に係る贈与税相当額を控除して算出します。
 なお、次に掲げるようなデメリットがあり、この制度の積極的な活用の呼びかけは少なく、利用者の数も限られていました。

◆現行相続時精算課税制度のデメリット
(1)暦年課税制度に戻ることが出来ない
(2)基礎控除の制度がなく110万円以下の贈与でも贈与税の申告が必要
(3)少額でも贈与税申告書の提出漏れには20%の加算税
(4)受贈財産が災害等で滅失しても考慮されない
(5)不動産だと小規模宅地の特例が使えず、不動産取得税の負担があり、登録免許税も相続時より高い
(6)相続税の物納には使えない
(7)贈与者である祖父の死亡前に相続時精算課税制度適用者である父が死亡したような場合、その相続人となる子は、父の相続に係る相続税の負担と、承継した父の相続時精算課税制度適用による納税義務の負担との二重課税となる

◆デメリット部分解消への税制改正
 今年の税制改正で、上記の(2)~(4)について見直しがなされることになりました。
1.相続時精算課税制度内に110万円の基礎控除制度が設けられ、毎年の特定贈与者からの贈与額からその基礎控除が引かれるとともに、その範囲内の贈与は申告不要とされ、相続に際しては、課税価格に加算される相続時精算課税受贈財産の価額は、先の基礎控除をした後の残額となります。110万円以下の毎年贈与だったら、暦年課税の3年内贈与加算相当部分も圧縮され、より優遇です。
2. 相続時精算課税で受贈した土地・建物が相続税申告時までに災害により滅失等の被害を受けた場合は、相続税の申告での課税標準への加算額から当該被害額を減額することとされました。
 今後、相続時精算課税制度の利用が大幅に増加することが予想されます。

 

(情報提供 ゆりかご倶楽部)


2023年03月14日

タワマン節税が抜本的規制へ 提供:エヌピー通信社

 


 相続税評価額と実勢価格のかい離を利用した「タワマン節税」の規制に向けて、国税庁が1月30日に第1回となる有識者会議を開催し、議論をスタートさせました。タワマン節税を巡っては、税負担を著しく軽減させる事例に限って通達で認められた「総則6項」を用いて後出しで否認するという対応がとられてきましたが、評価ルールそのものを見直すことで抜本的な規制を図ります。

 マンションは階数が変わったとしても住戸面積が同じなら固定資産としての評価額は変わりません。その一方で、実売価格は眺望のよい上階になればなるほど高くなるため、高層階ほど実勢価格と評価額の開きが大きくなる傾向があります。これを利用し、相続を見込んでタワーマンションの高層階を購入しておき、相続税を納めた直後に高額で売却するのが「タワマン節税」です。

 あくまで合法な手段ではあるものの、当局はこれを税逃れ目的の行為とみなし、税額の軽減効果が著しい事例にターゲットを絞り、「総則6項」を用いて否認してきました。この項目が適用されれば最終的には国税側の言い値が適用されることになります。

 昨年12月に与党が発表した税制改正大綱では、「現状を放置すれば、マンションの相続税評価額が個別に判断されることもあり、納税者の予見可能性を確保する必要もある」と見直しの必要性に言及し、「時価主義の下、市場価格との乖離の実態を踏まえ、適正化を検討する」と明記していました。

 1月30日に開催された第1回の有識者会議に出席した委員からは、「価格かい離はタワマンだけの問題ではなく、マンション全体の評価ルールを見直すべき」、「住宅購入者がマンションか一戸建てかを選ぶ際のバイアスとならないよう、急激な評価増は避けるべき」などの意見が上がっています。会議では全体の方向性として、一部の税逃れの防止のみが目的ではなく、評価額と時価のかい離の是正を目指すことを確認しました。有識者会議は今後も複数回開催される予定で、その結論を基に相続税の財産評価基本通達が見直される見込みです。
 

<情報提供:エヌピー通信社>

 
2023年03月06日

タワマン節税が法規制へ 提供:エヌピー通信社

 


 タワマン高層階の実勢価格と相続税路線価のかい離を利用した「タワマン節税」について、政府・与党は相続税評価額の算定ルールを改める方針を固めました。24年度以降の改正を目指しています。タワマン節税を巡っては2022年4月、実勢価格14億円のマンションを0円で申告した納税者に対して追徴課税した国税当局の処分の妥当性が争われ、国税側の主張を認める最高裁判決が下されています。

 マンションは階数が変わったとしても住戸面積が同じなら固定資産としての評価額は変わりません。その一方で、実売価格は眺望のよい上階になればなるほど高くなるため、高層階ほど実勢価格と評価額の開きが大きくなる傾向があります。例えば同じマンションのなかでも、1階住戸の実勢価格が5千万円、同じ広さの30階の住戸が1億円で、相続税評価額はいずれも2千万円とすると、実勢価格に対する評価額の割合は1階住戸なら40%、30階住戸なら20%という差が生まれます。数十階にもなるタワーマンションであれば、低層階と高層階の価格の開きが1億円以上になることも珍しくないため、節税効果もその分大きくなります。これを利用して、相続を見込んでタワーマンションの高層階を購入しておき、相続税を納めた直後に高額で売却するのが「タワマン節税」です。

 22年4月に最高裁判決が下された裁判では、2棟のタワーマンションを計14億円ほどで購入した納税者が、相続税評価額によって価額を3億円ほどまで引き下げ、さらに購入に当たっての借入金を債務として差し引いて2棟のマンションを0円として申告していました。最終的に追徴課税処分を行った当局側が勝訴したものの、あくまで合法の範囲内で行った相続税対策に対して後出しで追徴課税を行うのは横暴との反発の声も出ていました。

 そこで政府・与党は、相続税評価額のルールそのものの見直しに着手することを決めました。自民党税制調査会の会合では、国税庁からタワマン節税規制の必要性が示され、23年に不動産鑑定士や学者らで構成する有識者会議を設置することを決定。具体策を詰め、評価方法を定める財産評価基本通達の改正を行います。

<情報提供:エヌピー通信社>

 
2023年01月14日

税法と民法で異なる「持ち戻し」 提供:エヌピー通信社

 


 年末に決定する2023年度税制改正大綱に向けて、生前贈与の「持ち戻し」の期間を現行制度の3年から延長する案が浮上しています。持ち戻しとは、相続発生までの3年間に行われた生前贈与について、贈与ではなく相続によって得た財産として扱い、相続税を課すルールのこと。死期を悟ってからの駆け込み贈与による税負担の圧縮を防ぐために設けられています。

 覚えておきたいのは、この3年持ち戻しルールは、あくまで税法上の規定だということ。というのは、民法にも持ち戻しルールが存在するからです。
 民法の持ち戻しとは、特定の法定相続人への生前贈与があった時に、「遺産の前渡し」があったとしてその分を遺産に合算して遺産分割や遺留分の算定を行うというもの。相続税と似ていますが、こちらは3年ではなく相続発生までの10年間が対象となっています。かつては何十年前の贈与であっても対象とするという恐ろしい制度でしたが、さすがにそれはやり過ぎとの声が多かったためか、2018年に改正された民法によって10年間に短縮された経緯があります。

 なお税法、民法ともに、20年以上連れ添った配偶者への贈与については、持ち戻さなくてもよいとする優遇制度が設けられています。税法には以前からあったルールですが、民法では18年の民法改正時に、持ち戻し期間の短縮に併せて導入されました。

<情報提供:エヌピー通信社>

 
2022年12月05日

《コラム》原野の相続

 
 遺産の中から原野の土地が見つかったとき、その原野は、1970年代から1980年代に宅地として分譲されたものの、開発されないまま、放置された土地かもしれません。

◆土地の所在を確認する
 まずは、土地の売買契約書、登記簿謄本などをもとに、土地の所在を確認します。WEBで地図検索すれば、当該地を含む、近隣の場所を特定できます。近隣の建物の地番が手掛かりになります。

◆権利関係を確認する
 最新の登記簿謄本を取得し直し、所有権が被相続人となっているか、私道の共有持分は、誰が所有しているかを確認します。分譲から40年以上経過している土地であれば、所有者の多くに相続が発生し、相続登記されていないことも想定されます。

◆現地を確認する
 公図や測量図があれば、現況を確認します。長く放置されていた土地の場合、木々や草が生い茂っていて、目視での確認は困難かもしれません。少なくとも、近隣の建物や道路との位置関係からあたりをつけて、土地の形状、がけ地の有無などを把握できれば、不安も和らぐかもしれません。役所に現況を問い合わせてみるのも一法です。

◆原野の相続人を決める
 財産価値のない土地の相続であったとしても、令和6年4月から3年以内の相続登記申請が義務付けられますので、相続人を決めなければなりません。他に金融資産や土地など相続財産がある場合は、原野だけ相続放棄はできないので、遺産分割協議で原野の相続人を決めることが必要です。
 なお、倍率方式が適用される純原野などの財産評価は、固定資産税評価額に評価倍率を乗じて算出します。

◆相続土地国庫帰属制度の利用に備える
 令和5年4月から、相続又は遺贈により取得した土地を国が買い取る相続土地国庫帰属制度がスタートします。法務省のサイトに公開された制度概要によると、建物がないこと、土壌汚染や埋設物のある土地でないこと、担保権等が設定されていないこと、がけ地でないこと、隣地と境界に争いがないこと、管理費用を負担することなど、一定の要件に該当する場合、原野でも国に買い取ってもらえる可能性があります。
 具体的な取扱いは、これから決まるようですが、まずは相続登記を行い、将来の制度利用に備えることから始めましょう。


(情報提供 ゆりかご倶楽部) 
2022年11月30日

《コラム》今年の改正税法 相続登記義務化と登録免許税

 
◆不動産登記法の改正で相続登記義務化
 令和6年4月1日以降になると、不動産登記法の改正(令和3年4月28日公布)により、相続や遺贈により不動産を取得した相続人にとって、相続の開始があったことを知り、かつ、その所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請をすることが義務付けられることになりました。相続登記の義務化は、施行日前に相続の開始があったものについても、遡って適用されます。義務違反は10万円以下の過料の対象です。

◆「相続人申告登記」の新設
 3年以内に遺産分割が成立しない場合には、相続人が、登記官に対して、所有権の登記名義人について相続が開始した旨と、自らが相続人である旨を、相続登記の申請義務履行期間内(3年以内)に各人が申し出ることで、相続登記の申請義務は履行したものとみなされ、申し出を受けた登記官は職権登記を行います。これを「相続人申告登記」と言い、この場合の登録免許税は、職権登記の非課税の規定の適用と措置されます。
 ただし、この相続人申告登記では、持分割合の記載はなく、仮の報告を記載したものとの扱いなので、所有権主張の根拠にはなりません。また、遺産分割成立から3年以内に遺産分割の内容を踏まえた所有権移転登記の申請をすることも義務とされました。

◆今年の登録免許税法の改正
 なお、次の非課税措置も見直されています。
①相続により土地の所有権を取得した個人が相続登記をする前に死亡したときの当該死亡者を当該土地の所有権の登記名義人とするためにする登記の登録免許税(これは適用期限延長の見直し)
②不動産の価額が100万円以下の土地であるときの相続による所有権移転登記又は表題部所有者の相続人が受ける所有権保存登記についての登録免許税(この見直しは令和4年4月1日以後の登記から適用)

◆所有者不明土地関連はこれから
 なお、来年以降に施行とされている所有者不明土地関連の民法・不動産登記法・相続土地国庫帰属法の改正・創設に伴う新たな税制が、来年以降、目白押しで現れて来ると思われます。


(情報提供 ゆりかご倶楽部) 

 

 

 

2022年07月13日

《コラム》子供のない夫婦の相続

 
 子供のない夫婦が将来起きる相続を考えるとき、誰に自分の財産を託したいか、遺言書で自らの意思をはっきり残しておくことが大切です。

◆相続人の範囲
 遺言書がなく、遺産分割協議もできない場合、財産は、相続人に法定相続分で引き継がれます。被相続人の配偶者は常に相続人となりますが、被相続人の外に血族がいるときは、被相続人の子供(第1順位)、被相続人の父母など直系尊属(第2順位)、被相続人の兄弟姉妹(第3順位)の順で、それぞれが配偶者とともに相続人となります。

◆甥、姪への予期せぬ相続
 被相続人に子がなく、両親も他界、兄弟姉妹も既に死亡しているときは、兄弟姉妹の子(被相続人にとっては、自身の甥、姪)が代襲相続人として相続することになります。兄弟姉妹との間で、生前、仲たがいしていた場合、甥、姪にとって思いもかけない財産が舞い降り、お互い想定していなかった財産移転が起きることもあります。

◆遺言書で財産の引継ぎ先を指定する
 このような意図しない相続が行われないようにするためには、遺言書を作成しておくことで、財産を引き継がせたい人に渡すことができます。兄弟姉妹がいる場合でも、遺言書があれば配偶者に100%財産を渡すことができます。遺留分は兄弟姉妹にはありません。ただし、夫婦のどちらが先に亡くなるかは分からないため、夫婦それぞれで自分の財産を相手に渡す遺言書を作成しておく必要があります。

◆自分の人生の総括を
 配偶者の外に財産を移転させたい場合には、公益団体等に寄附して社会貢献する遺贈寄附という方法もあります。遺言書を利用して自分の人生を総括し、自身の財産を承継してほしい人や団体に財産を移転することは、意義があるかもしれません。
 遺言書には、公正証書遺言と自筆証書遺言の2つの方法があります。前者は公証人役場で公証人が立ち会って遺言書を作成してもらう方法。後者は自書で遺言書を作成する方法。令和2年7月から自筆証書遺言書を法務局に保管してもらうことも可能になりました。瑕疵のない遺言書を確実に作成したい場合は公正証書遺言とし、自身の意思を伝えることが主な目的であれば、自筆証書遺言で良いかもしれません。自身に合った方法を選択してはいかがでしょうか。


(情報提供 ゆりかご倶楽部)

 

 

2022年04月12日

基準地価が2年連続下落提供:エヌピー通信社

 全国の平均地価が2年連続の下落となったことが基準地価の公表で明らかになりました。もっとも住宅地などでは下落幅は縮小し、大幅な伸びを示したエリアもあります。

 国土交通省が公表した基準地価は、今年7月1日時点での全国の土地の価格を都道府県が調査し、公表したもの。最新の基準地価は、住宅地や商業地など全用途の全国平均は前年比で0.4%下がり、コロナ禍の影響を受けた前年に引き続き、2年連続で下落しました。

 ただ詳しく見てみると、地域や用途によって地価傾向は異なっていることが分かります。例えば東京、大阪、名古屋の三大都市圏の商業地をみると、東京圏が小幅ながらも上昇を維持、名古屋圏がマイナスからプラスに2.0ポイント改善したのとは対象的に、大阪圏だけが唯一、マイナス0.6%と下落していることが分かります。

 インバウンド需要で近年大きく地価を上げてきた大阪の商業地が下落するのは、2012年以来9年ぶりのこと。どこよりもインバウンドの恩恵を受けてきた大阪は、繁華街の中心であるミナミの地点が商業地の下落率ワースト2、3となるなど、コロナ禍によってインバウンドが消滅した今、他地域に増して厳しい状況に置かれています。

 コロナ禍でも堅調な伸びを示しているのが、札幌市、仙台市、広島市、福岡市の、いわゆる「札仙広福」と呼ばれる地方中核4都市。住宅地では前年を超える4.2%、商業地でも前年ほどではないものの4.6%と、三大都市圏を大きく上回る伸びを見せています。例えば札幌市は、鉄道駅徒歩圏の利便性が高い地域を中心とした需要の堅調さなどを受け、住宅地が7.4%上昇、福岡市の商業地では7.7%上昇などと目立った上昇を示しています。

 全用途での地価上昇ベスト10を見ると、最も地価が高騰したのは沖縄県豊見城市9-1の地点。同地点は工業地ですが、国道の拡充を機に那覇市街や那覇空港へのアクセスが向上した結果、物流拠点としての需要が高まり、3割近い急騰をみせました。

<情報提供:エヌピー通信社> 

 

 

2021年11月12日

《コラム》相続で所有者不明土地にしないために


 高齢化で相続が増加する中、利用されない土地が増えると、所有者が判明しない、又は連絡がつかない所有者不明土地が生じます。今年4月、これらの解消を目的とした民事基本法制の見直しが行われました。

1.不動産登記制度の見直し
 相続登記が義務化され、不動産を相続により取得した者は、その取得を知った日から3年以内に相続登記を申請しないと10万円以下の過料が徴収されます。一方、相続登記はこれまで、登記義務者が共同して申請しなければなりませんでしたが、新たに相続人が自らを登記名義人の法定相続人であることを申し出れば、単独で登記申請できる「相続人申告登記」※が新設され、登記申請義務を履行したものとみなされます。また、令和4年の税制改正では、相続人の登録免許税の負担軽減措置が図られる見込みです。(※所有権の移転登記ではなく、報告的な登記とされます)

2.相続土地国庫帰属制度の創設
 相続した土地を国が買い取る制度も新設されました。相続人にとっては朗報ですが、国は、安易な買取りを防ぐ観点から様々な条件をつけてハードルを高くしています。建物は相続人が取り壊して更地にすることや、土壌汚染や埋設物のある土地、崖地、担保権の設定された土地、通路に利用される土地、境界に争いのある土地などは、買取りの対象からはずされ、買い取る場合でも10年分の管理費用を国に支払うことが条件となるなど利用し難さが指摘されています。

3.土地利用に関連する民法の見直し
 民法も新制度の後押しをします。遺産分割協議の長期未了状態を解消するため、相続開始から10年経過したときは、特別受益者の相続分や寄与分によらず、画一的な法定相続分で遺産分割することとなりました。
 また所有者不明土地の利活用を促進する観点から新たな管理制度が創設され、選任された管理人が当該土地の管理や売却をできるようにしたほか、所有者不明土地を電気・ガス・水道などライフラインの確保に利用できるようになりました。

◆相続で所有者不明土地にしないために
 親世帯と同居することが少なくなり、相続が起きると土地や建物の利用目的が失われ、維持コストの負担も重くなります。行き場のない不動産としないためにも親の世代が将来の活用や処分に責任をもって臨むことが必要な時代になったと言えそうです。


 

 

(情報提供 ゆりかご倶楽部)

2021年09月16日

(後編)マイナンバーと預貯金口座を紐付ける新たな制度が創設!


(前編からのつづき)

 創設された制度では、相続人は預金保険機構に対し、全ての金融機関が管理する相続人の被相続人である預貯金者を名義人とする全ての預貯金口座について、金融機関及びその店舗の名称、預貯金の種別及び口座番号の通知を求めることができます。
 なお、個人番号と預貯金口座の紐付けは、すでに2018年からスタートしており、金融機関には、預貯金口座を個人番号と紐付けて管理する義務が課せられております。

 ただし、NISAなどの投資信託や教育・結婚子育て資金の一括贈与、外国送金など法令で個人番号の提出が義務付けられているものと異なり、預貯金口座の場合は、任意のため、金融機関が預貯金者に対し提出の協力をお願いする形となっております。
 新法により、金融機関は口座開設時等に預貯金者に対し、個人番号利用による預貯金口座の管理の希望の有無の確認が必要になりましたが、これまで同様、個人番号の提出義務は規定されておりません。
 今後の動向に注目です。

(注意)
 上記の記載内容は、令和3年8月2日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。


 

 

(情報提供 ゆりかご倶楽部)

2021年09月09日

(前編)マイナンバーと預貯金口座を紐付ける新たな制度が創設!





 「預貯金者の意思に基づく個人番号の利用による預貯金口座の管理等に関する法律」によりますと、マイナンバー(個人番号)と預貯金口座を紐付けすることにより、様々な給付金を簡単な手続きで受け取れるようになり、災害時や相続時などに通帳を紛失してしまい、口座が分からなくても、口座の所在を確認できる制度が創設されます。

 この法律によりますと、本人の同意を前提とし、一度に複数の預貯金口座への個人番号の付番が行える仕組みや、金融機関窓口からの番号登録だけでなくマイナポータルからも登録できる仕組み、相続時や災害時に預貯金口座の所在を確認できる仕組みを定めております。

 法律の施行は、公布日から3年以内とされており、内閣府の資料によりますと、相続時などサービス開始時期は2024年度からの予定となっております。
 現在、被相続人が亡くなった場合、被相続人の預貯金がどの金融機関に預けられているのか相続人が把握できないケースがあり、相続時の問題となっております。

(後編へつづく)

(注意)
 上記の記載内容は、令和3年8月2日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

 

(情報提供 ゆりかご倶楽部)

2021年09月09日

相続財産の上場株式等を調べる方法


相続が発生した場合に、相続財産に何があるのか相続人が把握するのが困難であるケースがあります。遺言書や終活ノート等がある場合は把握しやすいのですが、被相続人が生前子供たちと離れて一人暮らしであった場合も今後増加してくるものと予想され、相続財産把握困難なケースも増えてくるものと思われます。


今回は相続財産(税務上)の上場株式等(内国上場株式、上場投資信託受益権(ETF)など)を保護預かりしてもらっている証券会社等(証券会社、信託銀行など)を調べる方法として、株式会社 証券保管振替機構の「登録済加入者情報の開示請求」について簡単にとりあげます。


「登録済加入者情報の開示請求」は株式会社 証券保管振替機構を通じて、被相続人が上場株式等を保護預かりしてもらっている証券会社等がどこなのかを相続人等の照会により調べてもらう(有料です)制度です。

それにより判明した証券会社等に上場株式等の残高の情報を照会します。


相続税の申告実務の際は、被相続人の通帳の記録、配当計算書の存在、証券会社等からの郵便物の存在等により保有上場株式等の存在や残高が判明するのですが、それらを通じてもなお判明しない、あるいはそれら自体も紛失等していて把握出来ないケースは「登録済加入者情報の開示請求」を利用して把握するという最後の手段のようなものかと思います。


相続人が困らないよう終活ノートのようなちゃんとした形式まではいかなくとも、財産リストのメモくらいは生前に作っておくことが大事なことかと思います。

 
2021年08月13日

相続財産の生命保険契約を調べる方法


相続が発生した場合に、相続財産に何があるのか相続人が把握するのが困難であるケースがあります。遺言書や終活ノート等がある場合は把握しやすいのですが、被相続人が生前子供たちと離れて一人暮らしであった場合も今後増加してくるものと予想され、相続財産把握困難なケースも増えてくるものと思われます。


今回は相続財産(税務上)のなか生命保険契約を調べる方法として、一般社団法人 生命保険協会の「生命保険契約照会制度」について簡単にとりあげます。


「生命保険契約照会制度」は生命保険各社が加盟する一般社団法人 生命保険協会を通じて、被相続人が契約者又は被保険者になっている生命保険契約がどこの保険会社にあるのかを相続人等の照会により調べてもらう(有料です)制度です。
それにより判明した保険会社に具体的な保険契約の情報を照会します。


相続税の申告実務の際は、被相続人の通帳の記録、保険証券の存在、保険会社からの郵便物の存在等により契約の存在や内容が判明するのですが、それらを通じてもなお判明しない、あるいはそれら自体も紛失等していて把握出来ないケースは「生命保険契約照会制度」を利用して把握するという最後の手段のようなものかと思います。


相続人が困らないよう終活ノートのようなちゃんとした形式まではいかなくとも、財産リストのメモくらいは生前に作っておくことが大事なことかと思います。

 
2021年08月13日

《コラム》押印不要の書類が増えています


 菅内閣は脱ハンコ、DX(デジタルトランスフォーメーション)戦略を進めています。これに伴い、税務書類についても押印が不要となる書類が増えてきました。

◆税務署窓口における押印の取扱い
 令和2年12月21日に「令和3年度税制改正の大綱」が閣議決定され、この中で、税務関係書類(国税に関する法律に基づき税務署長等に提出される申告書等)の押印の見直しが行われました。提出者等の押印をしなければならないこととされている税務関係書類について、一部の税務関係書類を除き、押印を要しないこととする方針が示されました。そして、この取扱いは原則として令和3年4月1日以後に提出する税務関係書類について適用する予定となっていましたが、一方で「改正の趣旨を踏まえ、押印を要しないこととする税務関係書類については、施行日前においても、運用上、押印がなくとも改めて求めない」ともされていました。
 この閣議決定に基づき、全国の税務署窓口においては、本件見直しの対象となる税務関係書類について押印がなくとも改めて求めないこととしています。 

◆振替納税やダイレクト納付の手続も
 従来、振替納税やダイレクト納付をしようとする場合には、それぞれ「振替依頼書」や「ダイレクト納付利用届出書」に金融機関の届出印を押印する必要がありました。これらの手続も令和3年1月から、個人の方の振替依頼書及びダイレクト納付利用届出書をe-Taxで提出することが可能となりました。
 さらに、振替依頼書等のオンライン提出においては、金融機関の外部サイトにより利用者認証を行うので、電子送信時に電子署名及び電子証明書の添付も不要となります。

◆押印が必要な書類も
 とはいえ、担保提供関係書類・物納手続関係書類の一部や遺産分割協議書、特定個人情報の開示請求、閲覧申請手続など、押印が必要な書類もまだまだありますので注意しましょう。

(情報提供 ゆりかご倶楽部)
2021年04月20日

《コラム》 解明待ちの「土地の上に存する権利」

◆小規模宅地特例と配偶者敷地利用権
 相続税に於ける小規模宅地特例は、「土地又は土地の上に存する権利」について適用されるとしているので、配偶者居住権に基づく敷地利用権が「土地の上に存する権利」に該当しなかったら、小規模居住用宅地特例の対象にはなりません。

◆昨年、令和元年度政令改正
 昨年は、租税特別措置法では配偶者居住権について特別な改正をしていません。それにも拘わらず、配偶者居住権に基づく敷地利用権は小規模居住用宅地に当然に該当すると考えられたらしく、その計算規定が政令に、新規挿入されています。
 法改正なしでの政令規定新設の理由が財務省「税制改正の解説」で確認できます。すなわち、配偶者居住権は、借家権類似の建物についての権利であるが、配偶者居住権に付随するその目的となっている建物の敷地を利用する権利(敷地利用権)については、当然に「土地の上に存する権利」に該当すると理解されるから、ということのようでした。

◆今年の、令和2年度税制改正の解説
 ところが、同じ、財務省「税制改正の解説」の今年度版(9月11日公開)には、対価を伴う配偶者居住権の消滅には譲渡と同じ効果がある、所得としては総合課税の譲渡所得と考えられる、配偶者敷地利用権は「土地の上に存する権利」には該当しない、と書かれています。
 配偶者敷地利用権は、土地に関係する権利ではあるが、鉱業権・温泉利用権・借家権の仲間であり、「土地の上に存する権利」と言われる借地権の仲間ではない、ということです。
 昨年と今年で明らかに相違しており、この相違に問題が無い、との解説は今のところ出ていません。

◆土地の上に存する権利と相続税・所得税
 昨年の「税制改正の解説」での配偶者敷地利用権は相続税の改正の項目に関するものでした。今年の「税制改正の解説」での配偶者敷地利用権は所得税の改正の項目に関するものでした。
 相続税では、配偶者敷地利用権は土地の上に存する権利に該当するとされ、所得税では扱いが異なり、土地の上に存する権利には該当しない、とされたことについて、誰しもが疑問としているところなので、解明が待たれるところです。


(情報提供 ゆりかご倶楽部)

2020年11月12日

《コラム》令和2年7月から開始 自筆証書遺言書保管制度


 法務局が自筆証書遺言書を保管してくれるサービスが令和2年7月10日から開始しました。

◆公正証書遺言と自筆証書遺言
 公正証書遺言は、遺言者が公証人に内容を伝えて、その内容をもとに公証人が公正証書として遺言書を作成します。2名以上の証人が立ち会う必要もあります。費用や手間がかかりますが、公証人が内容の法的有効性をチェックしてくれたり、原本を公証役場で厳重に保管してもらえたりするメリットがあります。
 自筆証書遺言は、遺言者本人が遺言書を自書することにより作成します。一人で手軽に作成することができ、費用もかかりません。ただし、相続開始後に家庭裁判所の検認が必要となります。また、遺言者本人の死亡後、遺言書の紛失等により相続人等に発見されなかったり、一部の相続人等により隠匿や改ざんが行われたりするリスクもあります。

◆自筆証書遺言書保管制度のメリット
 この制度を利用して、自筆証書遺言書を法務局に保管してもらうことにより、遺言書の紛失・隠匿・改ざんといったリスクを回避することができ、あわせて家庭裁判所の検認も不要となります。
 遺言者は、法務局に遺言書を預けた後も、預けた遺言書を閲覧したり、保管の申請を撤回したりすることができます。
 また、相続人等は相続が開始した後であれば、遺言書が預けられているかを確認したり、遺言書を閲覧したり、遺言書の内容の証明書を取得したりすることができます。

◆注意点
 法務局に保管してもらう際、法務局の職員の方が自筆証書遺言の方式について外形的な確認はしてくれますが、遺言の内容について相談に応じたり、遺言内容の法的有効性について保証してくれたりするものではありません。また、この制度の手続はそれぞれ各種確認や手続の処理に時間を要するため、全ての手続について法務局に予約が必要となっています。
 この制度を利用する際には、司法書士さんや弁護士さんにも相談されることをお勧めします。
(情報提供 ゆりかご倶楽部)

2020年10月08日

《コラム》配偶者居住権は譲渡性資産か

◆配偶者居住権への昨年の税制措置
 平成30年の民法改正で創設され本年4月1日から制度がスタートしている配偶者居住権等については、その権利設定期間中の権利放棄や合意解除は可能と解されるものの、民法では、終身性の一身専属権ゆえ「配偶者居住権は、譲渡することができない」と規定されています。
 昨年の税制改正で相続税法に配偶者居住権等の評価規定が定められ、その上で、配偶者居住権等消滅に当たり対価がなければ、贈与課税の対象となる、と通達で明らかにされているところです。

◆配偶者居住権消滅の場合の譲渡所得
 本年改正では、収用や権利消滅で補償金や権利消滅の対価を受け取り、その結果、配偶者居住権等が消滅するときは、譲渡所得の計算をすることになりました。
 収用による配偶者居住権等の権利消滅の直接の相手は収用機関で、権利消滅の対価は譲渡収入とみなすとのみなし譲渡の規定になっています。
 また、収用に限らず、配偶者居住権等の権利消滅一般の場合の規定も作られ、自動的に譲渡所得の計算をするとされ、こちらについてはみなし譲渡の文言はありません。

◆改正税法と民法規定との関係
 みなし譲渡なら、民法の譲渡不可の規定と矛盾しないかもしれませんが、対価のある配偶者居住権の権利消滅につき無条件に譲渡所得計算をする、ということになると、配偶者居住権を譲渡性資産と認定するに等しく、民法との矛盾は明確です。
 その上、収用では、借地権の場合と同じく、配偶者居住権者と所有者の両方が譲渡当事者となることを前提としていますが、税法は、収用以外の譲渡一般でも、そのようなケースが生じることを想定しているのかもしれません。

◆譲渡課税が当然との体制整備は未だ?
 収用による権利消滅が譲渡で、土地建物所有者との合意や放棄による権利消滅も譲渡で、その他収用類似の権利消滅もみな譲渡だとすると、配偶者居住権は自ずと居住用の財産と認識されますので、居住用財産の3000万円控除、軽減税率、買換え特例の適用などについての手当が必要になってくるように思われます。
 これらについて法改正を今年の4月1日以後に向けて何故に用意してないのか、不思議です。

 


(情報提供 ゆりかご倶楽部)

2020年07月31日

《コラム》令和2年税制改正大綱 資産課税編


◆所有者不明土地等に係る措置(固定資産税)
土地・家屋の固定資産税は、原則として土地の「所有者」(登記簿上の所有者)に課税されますが、昨今の「所有者不明土地等」の増加に伴い、次の措置が設けられます。
(1)「現に所有している者」の申告制度化 市町村長は、その市町村内の土地・家屋について、登記簿に「所有者」として登記がされている個人が死亡している場合には、その土地・家屋を「現に所有している者」(現所有者)に、条例で定めるところにより、賦課徴収に必要な事項を申告させることができることとなりました。
(2)所有者不明土地等の「使用者」に課税 市町村は、調査を尽くしてもなお固定資産の所有者が一人も明らかとならない場合には、その「使用者」を所有者とみなして固定資産課税台帳に登録し、固定資産税を課することができることとされました。


◆国外財産調書制度等の見直し(相続税等)
(1)相続直後の調書等への記載の柔軟化 相続開始年の年末に有する国外財産に係る国外財産調書については、相続・遺贈により取得した国外財産(相続国外財産)は記載しないで提出できるようになりました。
(2)提出がない場合等の加算税等の見直し 国外財産調書の提出がない場合の過少申告加算税の加重措置の適用対象に、相続国外財産に対する相続税の修正申告等があった場合等が追加されました。 また、国外財産調書に記載すべき国外財産に関する書類の提示・提出がない場合の加算税の軽減措置・加重措置の特例が創設されました。


◆その他の改正(相続税・贈与税)
(1)農地等の納税猶予制度の対象拡大 特例適用農地等の範囲に、三大都市圏の特定市の市街化区域内に所在する農地で、地区計画農地保全条例(仮称)により制限を受ける一定の地区計画の区域内に所在するものが追加されます。
(2)医業継続に係る納税猶予制度の延長 適用期限が3年延長されます。
(3)相続税の物納の特例の対象拡大 適用対象となる登録美術品の範囲に制作者が生存中である美術品のうち一定のものが追加されます


(情報提供 ゆりかご倶楽部)

2020年02月11日

《コラム》戸籍法改正と相続手続きの円滑化


◆戸籍法の一部改正が成立、公布へ
 令和元年5月24日に戸籍法の一部を改正する法律が成立し、同月31日に公布されました。国民の利便性向上と行政の運営効率化を目的とした今回の改正では、どのようなことが可能になるのでしょうか。

◆戸籍法と戸籍事務の電子化
 私たちの親族的身分関係を証明する「戸籍」、この戸籍の作成や手続き等について定めた法律が「戸籍法」です。平成6年の改正によりコンピュータを使用して戸籍事務を取り扱うこととなり、現在では全国1896市区町村のうち1893市区町村でこのコンピュータ・システムが導入されていますが、各市区町村のシステムがネットワーク化されていないため、私たちが戸籍を請求するためには本籍地の市区町村役場で手続きしなければなりません。
 たとえば相続手続きで、自分と両親や叔父叔母等親族との身分関係を説明する場合、その親族の各本籍地へ戸籍を請求することになります。本籍地と住所地は別の概念であるため、住所地から遠く離れた場所であることもしばしば。遠隔地であれば郵送で請求することになりますが、郵便の往復期間もあり1通請求するのに数週間を要することもあります。相続手続きの際には、何人もの戸籍を請求しなければなりませんので、とても時間がかかります。

◆本籍地以外でも戸籍の取得が可能に
 こうした課題を受け、今回の改正では法務省が一括する戸籍データの管理システムを活用することで、本籍地以外の市区町村役場での戸籍請求が可能になります。また、電子的な戸籍記録事項の証明情報(戸籍電子証明書)の発行も可能になる予定です。
 このシステムの具体的な運用開始時期については、公布の日から5年と想定されています。今回の改正により、これまで煩雑で時間のかかっていた戸籍収集の手間が大幅に削減され、相続手続き全体の円滑化にも期待が持てそうです。


(情報提供 ゆりかご倶楽部)


2019年09月19日

《コラム》10月から適用されるマイホームの特例 消費税増税と住宅関連制度


 いよいよ本年10月からの消費税率引き上げが迫ってきました。税率引き上げの影響の大きい住宅については、税制上の対策だけではなく、税制以外の対策も取られています。

◆住宅についての税制上の対策措置
(1)住宅ローン控除等の拡充(所得税)
 消費税率10%の適用を受ける住宅の取得等については、令和元年10月1日から令和2年12月31日までの間に居住の用に供した場合、住宅ローン控除の適用期間が10年間から13年間に延長されます。
(2)住宅取得等資金に係る贈与税の非課税枠の拡充(贈与税)
 直系尊属からの贈与により取得した住宅取得等資金で一定の要件を満たすものについては、非課税限度額までの金額について贈与税の課税価格に算入されません。従来の非課税枠は最大1,200万円でしたが、消費税率10%の適用を受ける住宅については、非課税枠が最大3,000万円まで拡充されています。

◆税制以外の対策措置
(1)すまい給付金の拡充
 すまい給付金は、消費税率引き上げによる住宅取得者の負担を緩和するために創設した制度です。消費税率が8%に引き上げられた平成26年4月にスタートした制度で、最大30万円給付されるものでした。本年10月の消費税率10%への引き上げ後は、最大給付額が50万円まで増額されます。
 新築・中古、住宅ローンの利用の有無にかかわらず給付が受けられますが、収入(都道府県民税の所得割額)によって給付額が変わる仕組みとなっています。
(2)次世代住宅ポイント制度の創設
 次世代住宅ポイント制度とは、一定の省エネ性、耐震性、バリアフリー性能等を満たす住宅や家事負担の軽減に資する住宅の新築やリフォームをした人に対し、さまざまな商品と交換できるポイントを発行する制度です。
 住宅の新築(貸家を除く)の場合、1戸あたりに発行されるポイントの上限は35万ポイント、住宅のリフォーム(貸家を含む)の場合、1戸あたりに発行されるポイントの上限は30万ポイントです。



(情報提供 ゆりかご倶楽部)


2019年09月03日

(後編)空き家特例で老人ホーム等入所の具体的な確認事項を公表!国土交通省


(前編からのつづき)

 具体的に(a)は、支払い証明書、料金請求書、領収書、お客様情報の開示請求に対する回答書、通帳の写し又はクレジットカードの利用明細(最終の料金引渡し日が分かるもの)などをいいます。

 (b)は、例として、家屋を宛先住所とする被相続人宛の郵便物等や電気、水道又はガスの家屋の一定使用は認められますが、事業の用等に供されていないことが確認できていない場合の書類として、市区町村が認める者が家屋の管理を行っていたことの証明書、不動産所得がないことを確認するための地方税の所得証明書等明細(最終の料金引き落とし日が分かるもの)などを示しております。

 国土交通省は、被相続人居住用家屋確認書の申請時における提出書類(介護保険の被保険者証等の写しや老人ホーム等が保有する書類、電気、ガスの使用中止日が確認できる書類など)については、相続後や家屋・敷地の譲渡後に入手が難しいものもあるため、特例適用の検討段階において早めに準備するよう呼びかけておりますので、該当されます方はご確認ください。

(注意)
 上記の記載内容は、令和元年6月17日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。


(情報提供 ゆりかご倶楽部)

2019年07月17日

(前編)空き家特例で老人ホーム等入所の具体的な確認事項を公表!国土交通省


 国土交通省は、2019年度税制改正において、相続した空き家に係る譲渡所得の3,000万円特別控除の特例について、2019年4月1日以降の譲渡から、要介護認定等を受け、被相続人が相続開始の直前まで老人ホーム等に入所していた場合も、一定要件を満たせば適用対象となり、適用期限も4年延長されましたが、その一定要件について、具体的な確認事項を明示しました。

 老人ホームに入所していた場合の具体的な要件は、
①被相続人が介護保険法に規定する要介護認定等を受け、かつ、相続の開始直前まで老人ホーム等に入所をしていたこと
②被相続人が老人ホーム等に入所をしたときから相続の開始の直前まで、その者による一定の使用がなされ、かつ、事業の用、貸付けの用又はその者以外の者の居住の用に供されていたことがないこととされております。

 上記②の確認事項は、
(a)電気、水道又はガスの契約名義(支払人)及び使用中止日が確認できる書類
(b)老人ホーム等が保有する外出、外泊等の記録
(c)その他、要件を満たすことを容易に認めることができる書類のいずれかとしております。

(後編へつづく)

(注意)
 上記の記載内容は、令和元年6月17日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。


(情報提供 ゆりかご倶楽部)

2019年07月17日

(後編)2019年度税制改正:事業用小規模宅地等の特例の適用要件を見直し!


(前編からのつづき)

 具体的には、建物(附属設備を含む)又は構築物および所得税法2条1項19号に規定する減価償却資産(機械及び装置、車両及び運搬具、工具、器具及び備品等)をいいます。
 一連の改正の背景には、会計検査院によりますと、小規模宅地等の特例を適用した者の中には相続後、短期間で宅地等を譲渡していた者が多数いたことが実態調査により明らかになったことを踏まえ、事業や居住の継続への配慮という政策目的に沿ったものとなっていないとの指摘がありました。

 具体的には、会計検査院は2017年11月、相続により取得した土地等の財産を相続税の申告期限の翌日以降3年を経過するまでに譲渡していた2,907人の適用状況を調査した結果、243人が小規模宅地等の特例を適用しており、そのうち相続人が相続税の申告期限から1年以内に譲渡していたものが約6割の163件あり、1ヵ月以内に譲渡していたものが22件ありました。
 相続税の特定事業用の小規模宅地等の特例の適用要件が、税制改正において、厳しく見直されておりますので、該当されます方はご注意ください。

(注意)
 上記の記載内容は、令和元年6月10日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。


(情報提供 ゆりかご倶楽部)

2019年07月12日

(前編)2019年度税制改正:事業用小規模宅地等の特例の適用要件を見直し!


 小規模宅地等の特例は、事業用、居住用宅地等の相続税の課税価格を8割又は5割減額して相続人の事業や居住の継続等への配慮を目的に創設された制度ですが、2018年度税制改正においては、一定の要件に該当する「家なき子特例」とともに、相続開始前3年以内に貸付事業の用に供された宅地等が制度の適用から除外されました。

 そして、2019年度税制改正においては、特定事業用宅地等の範囲から、相続開始前3年以内に新たに事業の用に供された宅地等が除外され、すでに2019年4月1日以後に相続や遺贈により取得する宅地等の相続税から適用されております。

 ただし、その宅地に該当する場合であっても、その宅地等の上で事業の用に供されている減価償却資産の価額が、その宅地等の相続時の価額の15%以上である場合の事業を行っていた被相続人等の事業の用に供されたものである場合には、特例の適用対象とされ、その特例が適用される事業用資産が明示されておりますので、ご確認ください。

(後編へつづく)

(注意)
 上記の記載内容は、令和元年6月10日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

(情報提供 ゆりかご倶楽部)

2019年07月12日

(後編)国土交通省:2019年の地価公示を公表!


(前編からのつづき)

 交通利便性や住環境の優れた地域を中心に需要が堅調で、住宅地は2年連続の上昇となりました。
 商業地については、外国人観光客をはじめとする国内外からの訪問客の増加、インフラ整備や再開発事業等の進展による利便性・繁華性の向上等を背景に、主要都市の中心部などでは、店舗、ホテル等の進出意欲が活発となっております。
 このような商業地としての収益性の高まりに加え、金融緩和による良好な資金調達環境も重なり、法人投資家等による不動産取得意欲が強いこともあってか、商業地の地価は総じて堅調に推移し、4年連続の上昇となりました。

 今年も7月には、国税庁から相続税や贈与税を計算するときの土地の評価額である路線価が公表されますが、地価公示価格は、売買実例価額や不動産鑑定士等による鑑定評価額等とともに、路線価を算定する際の基となることから、地価公示価格の上昇が7月に公表される2019年分の路線価に影響を及ぼすことがすでに予想されており、今後の動向には注目です。

(注意)
 上記の記載内容は、令和元年5月1日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

(情報提供 ゆりかご倶楽部)

2019年06月05日

(前編)国土交通省:2019年の地価公示を公表!


 国土交通省は、2019年1月1日時点の地価公示を公表しました。
 それによりますと、商業・工業・住宅の全用途(全国)で1.2%のプラス(前年0.7%上昇)と4年連続で上昇し、上昇幅も3年連続で拡大しました。
 また、住宅地は0.6%(同0.3%)、商業地は2.8%(同1.9%)上昇しました。

 三大都市圏以外の地方圏でも住宅地が1992年以来、27年ぶりに上昇に転じており、地方圏のうち、地方四市(札幌市、仙台市、広島市、福岡市)では全ての用途で上昇が継続し、全国的に地価の回復傾向が広がっていることが明らかになりました。
 国土交通省では、地価上昇の背景として、交通利便性等に優れた地域を中心に住宅需要が堅調であることや、オフィス市場の活況、外国人観光客増加による店舗・ホテル需要の高まりなどを要因として挙げております。
 住宅地については、雇用・所得環境の改善が続くなか、低金利環境の継続や住宅取得支援施策等による需要の下支え効果もあります。

(後編へつづく)

(注意)
 上記の記載内容は、令和元年5月1日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。


(情報提供 ゆりかご倶楽部)

2019年06月05日

《コラム》消費税改正に向けた次世代住宅ポイント制度とは?


◆消費税率引上げに対しての政策
 消費税率の引上げが行われると、引上げ前の駆け込み需要の後、需要は大きく低下します。この需要変動に対して、特に「内需の柱」と位置付けられている住宅関連投資の反動減を少しでも軽減させようと、消費税率10%の際には住宅ローン控除等の既存制度に加えて、ポイント制度を新設しました。それが「次世代住宅ポイント制度」です。対象となる建物は2019年10月1日以降に引渡しを行うもので、ポイント申請受付は工事請負契約後から申請できるため、2019年6月3日開始予定です。

◆内容は、商品が貰えるポイント制度
 次世代住宅ポイント制度は、住宅の新築・住宅のリフォームにおいて、エコ住宅や耐震住宅・バリアフリー住宅等、「省エネ・環境」、「安全・安心」、「健康長寿・高齢者対応」、「子育て支援、働き方改革」に資する住宅・工事内容である場合、その内容に応じてポイントがもらえるものです。
 新築の上限は1戸当たり35万ポイント、リフォームの場合は30万ポイントとなりますが、若者・子育て世帯がリフォームを行った場合は上限45万ポイント、既存住宅を購入し、リフォームを行う場合は、各リフォームのポイントを2倍カウントします。
 貰ったポイントはカタログサイトから「省エネ・環境」、「防災」、「健康」、「家事負担」、「子育て」、「地域振興」のカテゴリに該当する商品と交換ができます。なお、現在交換商品を募っており、出品業者としては通信販売の実績等の制約はありますが、申請が通ればポイント事務局の商品一覧に掲載してくれるようです。該当するジャンルが幅広いので、該当する商品を取り扱っている企業も多いはずです。一度検討してみてもいいかもしれません。

◆ふるさと納税との兼ね合いも
 ポイント商品の要件を見てみると「地域の振興」に資する商品については追加要件に「H31年度のふるさと納税の返礼品として紹介されていること」とあります。ふるさと納税は今年6月からお礼の品に関して規制が入ります。ふるさと納税と併せて次世代住宅ポイントでも地場産品については利用可能としたことで、地方自治体への「アメとムチ」の「アメ」の部分として役割を持たせようとしたのでしょうか?


 (情報提供 ゆりかご倶楽部)

2019年06月04日

(後編)2019年度税制改正:空き家に係る特別控除、制度の拡充と4年延長へ


(前編からのつづき)

 特例創設の趣旨が、居住用家屋が空き家となることを防ぐ目的であることから、被相続人が死亡した時点で1人暮らしであった場合に限定され、区分所有建物は除かれるなど、あくまで相続から譲渡まで引き続き空き家でなければならず、これまでの要件は厳格でしたが、今回の改正において、一定の要件を満たせば、被相続人が老人ホーム等に入所していた場合も対象に加えられました。

 具体的な要件としては、
①被相続人が介護保険法に規定する要介護認定等を受け、かつ、相続の開始直前まで老人ホーム等に入所をしていたこと
②被相続人が老人ホーム等に入所をした時から相続の開始の直前まで、その者による一定の使用がなされ、かつ、事業の用、貸付けの用又はその者以外の者の居住の用に供されていたことがないこととしております。

 なお、この改正は、2019年4月1日以後に行う被相続人居住用家屋又はその敷地等の譲渡について適用されますので、該当されます方はご確認ください。

(注意)
 上記の記載内容は、令和元年5月1日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。



(情報提供 ゆりかご倶楽部)
 

2019年05月29日

(前編)2019年度税制改正:空き家に係る特別控除、制度の拡充と4年延長へ


 2016年度税制改正において、所有者不明土地の増加とともに、居住用家屋が空き家となってしまうことを防止するため、相続した空き家を一定要件のもとで譲渡した場合には、居住用財産の譲渡所得の特別控除に該当する譲渡とみなして同控除を適用する特例が創設されました。
 しかし、同特例は、2019年12月末で期限切れとなってしまうため、2019年度税制改正において、制度の拡充を行った上で、適用期限が4年延長されました。

 同特例の適用要件は、
①相続開始直前に被相続人のみが居住していた1981年(昭和56年)5月31日以前に建築された家屋(区分所有建物を除く)及びその敷地で、相続の開始日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡すること
②譲渡価額が1億円を超えないこと
③譲渡をする家屋・土地は、相続の時から譲渡の時まで事業用、貸付用、居住用に使われていないことで、居住用財産譲渡の場合の3,000万円の特別控除が適用できます。

(後編へつづく)

(注意)
 上記の記載内容は、令和元年5月1日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。



(情報提供 ゆりかご倶楽部)
 

2019年05月29日

《コラム》新元号と提出書類


◆平成40年は令和何年?
 西暦2019年5月1日から、日本の元号は「令和」となり、それに伴って国税庁から「新元号に関するお知らせ」というものが出ています。
 それによると「納税者の皆さまからご提出いただく書類は、平成表記でも有効なものとして取り扱うこととしております」となっています。ちなみに平成40年は令和で言えば10年です。今回は区切りが良いので変換しやすいですね。

◆他の役所の書類は?
 改元に伴う元号の年表示の取り扱いについては「関係省庁連絡会議申合せ」という通知が出ています。
 それによると原則各府省が作成する文章は、改元日以降は「令和」を使う。また、やむを得ず「平成」の表記が残る場合でも、該当表示は有効となるが、混乱を避けるように、訂正印や手書きの修正、文章や画面に「表記が平成でも有効」と注意書き等を入れるように推奨しています。
 また、「国民が各府省に申請等を行う場合において、改元日以降の年の表示が平成とされていても、有効なものとして受け付けるものとする」と記載されています。やはり平成でもOK、ということでしょう。

◆法律や政令はどうなるのか
 法律及び政令についても「平成」を用いて改元日以降の年を表示している場合はそのまま有効となります。
 また「改元のみを理由とする改正は行わない」としていて、「改元以外の理由により改正を行う際についでに直す」という方針のようです。ただし「改正しないと支障がある場合は、個別に検討して措置します」としているあたり、「念には念を」の気持ちを感じる文章です。

◆穏やかに少しずつ変わる改元
 今回の改元は前もって行われる日が分かっており、システム関係の方は「もっと時間を」と思ったかもしれませんが、対応は徐々に浸透してゆけばよいといった、柔軟な感じがします。
 ただ、外務省は西暦表記を検討する等、変化する姿勢もありました。この令和という時代、いったいどのように世の中は移ろってゆくのでしょうか。

(情報提供 ゆりかご倶楽部)
 

2019年05月15日

《コラム》消費税改正に向けた住宅ローン控除周辺の改正


◆住宅ローン控除は平準化を目指し改正
 消費税率の引上げに際し、需要変動の平準化の観点から、住宅ローン控除についての改正が行われます。
 2019年10月から20年12月までに入居する住宅で、消費税が10%となる住宅については、控除期間が現行の10年から13年に延長されます。
・1~10年目:住宅ローン年末残高×1%(※最大40万円)
・11~13年目:次のいずれか少ない金額
 ①住宅ローン年末残高×1%
 ②取得価額(※最大4000万円)×2%÷3
※長期優良住宅等の場合:50万円・5000万円

◆「すまい給付金」も拡大
 住宅ローン控除は、支払っている所得税等から控除する仕組みであるため、収入が低いほどその効果が小さくなります。負担軽減効果が十分に及ばない収入層に対して、住宅ローン減税と併せて消費税率引上げによる負担軽減を図るのがすまい給付金です。
 このすまい給付金についても、消費税増税に併せて、給付額の上限引き上げと適用となる収入帯の増加が予定されています。
 配偶者控除ありのモデルケースの場合、消費税8%の場合は給与収入で425万円以下の場合、30万円の給付が受けられましたが、10%の場合は給与収入が450万円以下の場合は50万円の給付が受けられます。また、10万円の給付を受ける場合で見ると8%時は510万円以下だったのが10%では775万円以下となります。なお、給付を受けられるかどうかは都道府県民税の所得割額で判定されるので、ふるさと納税等で税額を減らしていると、さらに有利な条件で給付が受けられる可能性があります。

◆さらにポイント制度も新設
 国土交通省は、「良質な住宅ストックの形成」をめざし、消費税率10%で一定の性能を有する住宅の新築やリフォームに対して、商品等と交換できるポイントを発行する「次世代住宅ポイント制度」も開始予定です。 この制度は「環境」「安全安心」「健康・高齢者」「子育て・働き方」に資する住宅の新築やリフォームが対象となり、上記に資する商品を貰える予定となっていますが、今のところどんな商品が貰えるかは、まだ公表されていないようです

(情報提供 ゆりかご倶楽部)


2019年04月16日

《コラム》平成31年度税制改正大綱 資産課税編


◆個人事業者版の事業承継税制創設
 平成30年度税制改正では、非上場会社の事業承継税制の大胆な見直しが行われましたが、これに続き31年度改正では、個人事業者の事業承継税制が創設されました。
 総務省の調査では、平成37年には個人事業者の73%(150万人)が70歳以上となると報告され、世代交代を後押しする施策が求められています。そのため、10年間の時限措置として、承継資産(土地・建物・機械等)に係る贈与税・相続税の100%が納税猶予される制度が整備されます。
 なお、この制度は小規模宅地等(特定事業用宅地等)との選択適用になります。

○個人事業者の事業用資産の納税猶予(相続税)
対象者:認定相続人(承継計画の認可)
適用期間:H31.1.1~H40.12.31
要件:①相続又は遺贈により特定事業用資産を取得し、事業を継続していくこと②申告期限までに担保提供・申請書提出
対象資産:特定事業用資産(不動産貸付事業除く)
①土地(地積400㎡まで)、②建物(床面積800㎡まで)、③一定の償却資産
※青色申告書に添付する貸借対照表に計上されているもの
承継後:継続届出書を税務署に提出

◆特定事業用宅地等(小規模宅地)の見直し
 小規模宅地等の減額制度の濫用を防止する観点から、特定事業用宅地等から相続開始前3年以内に事業の用に供された宅地等が除かれることとなります。ただし、その宅地の上で事業供用される償却資産の価額が土地の価額の15%以上であれば、適用対象とされます(H31.4以後の相続より適用)。

◆民法の成人年齢引下げに伴う改正
 平成34年4月以後の相続・贈与より、次の年齢が20歳から18歳に引き下げられます。
・相続税:未成年者控除の対象者の年齢
・贈与税:下記の受贈者の年齢要件
①相続時精算課税制度、②直系尊属から贈与を受けた場合の特例税率、③非上場株式等に係る贈与税の納税猶予

◆一括贈与非課税に受贈者の所得要件が追加
 「教育資金」、「結婚・子育て資金」の一括贈与非課税については、受贈者の所得要件が設けられることとなりました。平成31年4月以後の贈与からは、受贈者の贈与前年の合計所得金額が1,000万円を超える場合には適用できません。また、23歳以上の趣味の習い事代は「教育資金」の範囲外とされました(H31.7以後の贈与より)。


(情報提供 ゆりかご倶楽部)

2019年01月24日

《コラム》不動産管理会社に支払う不動産管理料の適正額


 賃貸物件を所有する個人が不動産管理会社を設立して、不動産の管理をその管理会社に委託し、管理料を支払うことで所得を分散させるという一般的な節税手法があります。
 支払った管理料の分を必要経費とし個人の所得税を抑えることができるというものですが、不動産管理料が不当に高額である場合、適正額を超えた部分についてはその経費性を否認されることとなるため、留意が必要です。

◆管理料の相場と決定方法
 同族経営の不動産管理会社に支払う管理料は、事業運営方式にもよりますが5%~15%が相場です。過去の裁判例を参考にして手数料率を決定するという方法もありますが、表面的な数字ではなく、不動産管理会社が実際に行う管理業務の内容、その業務の周辺相場、同様の業務を他業者に委託した場合にいくらまでなら支払うかが管理料決定の基準となります。

◆同族会社の行為計算否認規定
 不動産管理料がその管理業務の実態と照らし合わせて「不当に高額である」として否認される場合にその根拠となるのが、所得税法第157条「同族会社等の行為又は計算の否認等」の規定です。当該規定は、課税の公平を図る趣旨から、所得税の負担を不当に減少させる結果となると認められる場合に適用されます。同族会社であるがゆえに第三者取引には通常見受けられないような料金設定がなされた場合、その不相当に高額な部分が必要経費として認められないこととなります。

◆適正額と業務上の留意点
 管理料については、個々の物件の規模、地域性、管理業務の具体的な内容を総合的に勘案し、業務内容に則して決定することが必要です。また、修繕費や共益部分の費用をどちらで負担するのかを事前に決定したり、さらには業務日誌を作成する、メールやFAXといった日々の業務のやり取りを保管するなど業務実態を明確にしておくことも重要です。

(情報提供 ゆりかご倶楽部)

2019年01月11日

《コラム》自筆証書遺言保管制度の新設と遺言書の方式緩和


◆自筆証書遺言保管制度の新設
 平成30年7月6日、法務局における遺言書の保管等に関する法律が成立し、法務局において自筆証書遺言を保管する制度が新たに設けられることとなりました。
 新たな制度では、予め保管申請しておくと、遺言者が死亡した後に相続人が法務局において、遺言書保管事実証明書及び遺言書情報証明書の交付請求、遺言書原本の閲覧請求をすることができるようになります。また、相続人の1人に遺言書情報証明書を交付した場合または遺言書の閲覧をさせた場合には、法務局から他の相続人等に遺言書が保管されている旨が通知されることになります。

◆紛失・改ざんなどのリスク
 自宅で自筆証書遺言を保管した場合、紛失・亡失の可能性がありますし、遺言書の内容によっては相続人による廃棄、隠匿、改ざんの恐れがあります。実際、その内容に不満を持った相続人が意図的に廃棄する、内容を書き換えるといったことにより相続手続きや相続税申告に支障が出るケースも見受けられます。

◆相続手続きと相続税申告をスムーズに
 相続税の申告は被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内に行うことになっています。ところが、相続財産の把握や財産分割には思いのほか時間がかかるものです。自筆証書遺言があった場合でも家庭裁判所で検認という手続きが必要になり、最低でも1か月はかかるのが現状です。保管制度を利用すると検認は不要ですし、自筆証書遺言で財産目録と遺言者の意思表示が分かりますので、相続手続きと相続税申告書作成がスムーズにできると期待されます。なお、保管制度の施行日は今後政令で定められることになりますが、施行前には法務局に遺言書の保管を申請することはできませんのでご注意ください。

◆遺言書の方式緩和
 現民法では自筆証書遺言は全文を自筆する必要がありますが、民法改正によりパソコンで作成した財産目録、通帳のコピー、登記事項証明書等の自書によらない財産目録を別途添付することが可能となります。
 財産目録には遺言者の署名押印を行うことで偽造を防止します。この改正は平成31年1月13日から施行されます

(情報提供 ゆりかご倶楽部)

 

 

2018年11月06日

《コラム》固定資産税は気を付けて

◆固定資産税は賦課決定
 所得税や法人税は納税者本人が税額を計算し申告して税金を納めます。
 それに対し、固定資産税は役所が不動産を一方的に評価して納税額を決め、それを納税者が納めます。

◆固定資産税にはプロがいない
 お役所のやることだから間違いはないだろうと思いがちですが、結構間違いは多いのです。その原因は対象不動産に対して圧倒的に評価人員が不足しているということです。東京都の場合、都内に土地は約221万筆、家屋は約160万戸あると言われています。これらを全て実地調査することは不可能と言われています。また、都の職員は都税事務所に就職するのではなく東京都に就職し、職場のローテーションで固定資産税の現場に配属されますが、定年まで固定資産税係ということはなく2~3年で別の部署に配属されますので常に素人集団です。こういった傾向はどの自治体も同じです。

◆まずは納税通知書を見直してください
 固定資産税の納税通知書は読みにくいでしょうが、以下のことを確認してください。
(1)土地の所在・家屋の所在、家屋番号
自分のものか確認してください。
(2)登記地目・家屋の種類・用途、構造
現況と異なっていないか?
(3)地積・家屋面積
実際の面積と相違がないか?
ただし、実測をする場合はかなりの費用が掛かります。
(4)価額
住宅用地の場合、評価額と課税標準額は異なります。当然課税標準額の方が小さいはずです(ちなみに住宅用地の場合、住宅1戸につき200㎡までは1/6です)。

◆おや?と思ったら
 自治体の窓口に出向いて課税資料を請求してください。
 土地なら「土地現況調査票」、家屋なら「再建築評点計算書」「基準年別計算書」(自治体により名称が異なる場合があります)が必ずあるはずです。
 明らかにおかしい場合は、「審査申し出」を行ってください。しかし「審査申し出」は原則として3年に1回の基準年度の限られた期間ですので、窓口で「再調査」の依頼をしてみてください、自治体により対応していただける場合もあります。


(情報提供 ゆりかご倶楽部)


 

2018年09月18日

《コラム》新しい権利 配偶者終身居住権


◆新しい法定された権利の創設
 民法が改正され、配偶者終身居住権が創設されました。被相続人の配偶者が自宅に住み続けることができる権利で、高齢化が進む中、残された配偶者の住居や生活費を確保し易くする、というのが狙いです。
 子が自宅の所有権を相続し、被相続人の配偶者が終身居住権を相続する、というのが最も典型的な予想ケースとされています。
 所有権が第三者に渡っても、そのまま自宅に住み続けることができる、という排他的権利です。

◆評価額と権利の性質
 居住権の評価額は平均余命などを基に算出され、不動産の価額は、終身居住権の価額と終身居住権付不動産の価額とに分割されることになる、と法務省法制審議会民法部会で審議されていました。相続税評価額がどうなるかは未定ですが、法制審の審議を承けたものになると思われます。
 終身居住権の譲渡資産性は弱そうですが、登記されることを前提にしているので、債権でありながら、借地権のような物権的性格を強く持ちそうです。

◆所得税への影響
 相続により承継する終身居住権と終身居住権付不動産のそれぞれが、譲渡の局面に立ち至った場合は、それらの承継取得原価は、借地権と底地の関係のように、各評価額の比で按分されることにならざるを得ません。ただし、それには、借地権の法律政令の規定のような終身居住権に係る新たな規定の創設が必要です。

◆終身居住権の一身専属性
 終身居住権は一身専属権として死亡と共に消滅するものです。その自然消滅によって、終身居住権付不動産は何の制限もない不動産に生まれ変わります。その時に、終身居住権の消滅益を認識すべきか、終身居住権に対応することになる承継取得原価はどのような扱いになるか、なども必然の検討テーマになります。

◆自然消滅借地権が参考になる
 自然消滅借地権の場合は、借地権の消滅益を認識せず、借地権の取得価額は自然消滅になります。これに準ずるとすると、終身居住権の消滅益は認識せず、それに対応している取得価額も自然消滅となり、誰にも承継されません。

(情報提供 ゆりかご倶楽部)


 

2018年09月04日

道のはなし(後編)


では、道路が土地の評価に与える影響で代表的なものを挙げます。


①セットバック・・建築基準法42条2項に接道している宅地については、建物の改築や立て直しをする際、原則、道路の中心線から2mを道路と土地の境界線として土地を後退(セットバック)しなければなりません。財産評価基本通達においてもこれを勘案しそのセットバックしなければならない部分の土地評価を70%減額することとなっています。


②都市計画道路予定地(建築基準法42条1項4号)の区域にあたる宅地・・その土地について0.7~0.98の補正率を乗じて評価します。


③建築基準法に規定する接道義務を満たしていない宅地、無道路地・・その接道義務を満たすための通路開設部分(2mの道幅)を減額して評価します。


④私道の評価・・建築基準法に規定する道路ではなく、接道する土地の所有者等の所有地となっている道(私道)はその区分により以下の通り評価します。(a)不特定多数の者の通行の用に供する私道(いわゆる通り抜け私道)はゼロ評価(b)特定の者の通行の用に供する私道(行き止まりのなっている私道等)は30%評価


以上は財産評価基本通達に載っている代表的なものですが、相続税(贈与税)の土地評価実務においては、財産評価基本通達による評価に入る前にまず、土地及びその周辺の現場視察による土地の利用価値の確認、市役所等の役所調査を通じて建築基準法や都市計画法その他税法以外の法規による規制の確認が必要です。調査をしていて予想外のことにぶつかる事もあります。


土地の評価はその土地の個別事情により大きく評価額が変わる可能性があり、また守備範囲が税法を超えていく場合もありますので、財産評価の中でも特に土地評価は専門性の高い分野といわれています。

 


 

2018年09月02日

道のはなし(中編)


 建築基準法では道路として以下の種別で分類し、定めています。(以下①~⑦まで大阪市のホームページ「建築基準法上の道路の種別」より抜粋)

①42条1項1号・・道路法による道路(国道、府道、市道のみで構成された道路幅4m以上の道路)

②42条1項2号・・都市計画法、土地区画整理法、旧住宅地造成事業又は都市再開発法等による道路(都市計画として決定される都市計画事業・土地区画整理事業等により築造された道路)

③42条1項3号・・法施⾏の際すでにあった道(都市計画区域の決定受けたとき(建築基準法、施⾏の⽇にすでに都市計画区域の指定を受けていた区域については建築基準法施⾏の⽇)に現に存在する道路幅4m以上ある道

④42条1項4号・・道路法、都市計画法、⼟地区画整理法又は都市再開発法等で2年以内に事業が執⾏される予定のものとして特定⾏政庁が指定したもの(実際には道路としての効
用はまだ果たしてなく、2年以内にその事業が執⾏されるものとして特定⾏政庁が指定したもの)

⑤42条1項5号・・土地を建築物の敷地として利用するため、政令で定める基準に適合する私道を築造し、特定行政庁から指定を受けたもの(道の基準は政令で定めるほか、土地の状況等により各特定行政庁で政令と異なる基準を定めることが出来る(位置指定道路))

 

⑥42条2項・・法施行の際、現に建物が立ち並んでいた道路幅4m未満の道で特定行政庁が指定したもの(道路の中心線から2mの線をその道路の境界線とみなす。但し道路の片側が、がけ地、川、線路等に沿ってある場合は道路の反対側から一方後退4mの線を道路の境界線とみなす)

 

⑦附則5項・・市街地建築物法第7条但書きによって指定された建築線で、その間の距離が4m以上のもの(道路法による道路のみで構成された道路幅4m未満の道路)

 


 

2018年09月01日

道のはなし(前編)


 相続税申告のための土地評価の際、その土地に接する道がどのような道なのか調査を
します。相続税の財産評価の拠り所となる法規は相続税法、その取扱いは財産評価基本通達となりますが、道については主に建築基準法です。日頃、税法や通達によって業務をしている税理士にとっては馴染みにくい法規だと思います。

ところが、国税庁の路線価も道に付されていることでも分かるように土地の財産評価と(建築基準法に規定する)道(道路)には密接な関係があります。

建築基準法とは建築物の敷地。構造、設備及び用途に関する最低限の基準を定めて。国民の生命、健康及び財産の保護を図り、もって公共の福祉の増進に資すること(第1条)を目的とした法律です。それをもとに市町村等の各自治体で建築安全条例、建築基準法施行規則が定められ運用されています。

建築基準法では道路とは幅員が原則4m(例外的に6m)以上の道とし、道路に接していない土地には建築物を建てられません。2m以上の接道義務もあります。また高速道路(自動車専用道路)のみに接している場合は接道義務を満たしていることになりませんが、農道には接している、広い空き地に接している等の場合で建築審査会の同意を得て許可された道路は43条但し書き道路として例外的に接道義務を満たしていることになります。


 

2018年08月31日

相続税申告書添付書類の見直し(後編)


(前編からのつづき)

 法定相続情報一覧図の写しとは、相続登記の促進を目的として、2017年5月から全国の法務局で運用を開始した法定相続情報証明制度を利用することで交付を受けることができる証明書をいい、戸籍に基づいて、法定相続人が誰であるかを登記官が証明したものです。
 相続手続きは、法定相続情報一覧図の写しを利用することで、戸籍関係の書類等一式を何度も提出する必要がなくなりました。

 これまで相続人は、遺産に係る相続手続きに際し、被相続人が生まれてから死亡するまでの戸籍関係の書類等一式を全て揃えた上で、同じ書類を管轄の異なる登記所や各金融機関など、相続手続きを取り扱う各種窓口に何度も提出する必要がありましたが、法定相続情報一覧図の写しは、様々な相続手続きに利用されることで、相続手続きに係る相続人・手続きの担当部署双方の負担の軽減が期待されています。

 なお、法定相続情報一覧図の写しは、相続人等が亡くなった人の本籍地・最後の住所地、申出人(相続人など)の住所地などを管轄する法務局のいずれかで、必要種類と合わせて申出をすることで、無料で交付を受けられます。

(注意)
 上記の記載内容は、平成30年6月8日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。


(情報提供 ゆりかご倶楽部)

 

2018年07月05日

相続税申告書添付書類の見直し(前編)


 2018年度税制改正において、相続税申告の添付書類の改正も行われ、相続税法施行規則の改正により、2018年4月1日以後に提出する申告書から法務省が行っている法定相続情報証明制度で取得が可能な法定相続情報一覧図についても、一定の条件をもとに添付書類として認められております。
 これまでは相続税の申告書には、戸籍の謄本で被相続人の全ての相続人を明らかにするものを添付しなければならないこととされていました。

 しかし、2018年4月1日以後は、戸籍の謄本に代えて、図形式の法定相続情報一覧図の写し(子の続柄が、実子又は養子のいずれであるかが分かるように記載されたものに限る)あるいは戸籍の謄本又は法定相続情報一覧図の写しをコピー機で複写したもののいずれかの書類を添付することができるようになりました。
 ただし、被相続人に養子がいる場合には、その養子の戸籍の謄本又は抄本(コピー機で複写したものも含む)の添付も必要となりますので、該当されます方はご注意ください。

(後編へつづく)

(注意)
 上記の記載内容は、平成30年6月8日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。



(情報提供 ゆりかご倶楽部)

 

2018年07月05日

平成30年度税制改正 資産課税編2


 今回は、特定一般社団法人等を中心にその他の主な改正項目を概観してみます。

●特定一般社団法人等への相続税の課税
 当該法人等の役員(理事に限る。以下同じ)である者(相続開始5年以内のいずれかの時において当該法人等の役員であった者を含む)が死亡した場合には、当該法人等が当該法人等の財産を同族役員(被相続人も含む)の数で等分した額を当該被相続人から遺贈により取得したものとみなして、当該法人等に相続税(既に課された贈与税額を控除)を課税する。
 なお、(1)特定一般社団法人等とは、公益・非利型法人その他の一定の法人以外の一般社団・財団法人で、次のいずれかの要件を満たす一般社団法人等です。①相続開始の直前における同族役員数の総役員数に占める割合が2分の1を超えること。②相続開始前5年以内において、同族役員数の総役員数に占める割合が2分の1を超える期間の合計が3年以上であること。
(2)同族役員とは、当該法人等の理事のうち、被相続人、その配偶者又は3親等内の親族その他当該被相続人と特殊の関係にある者(被相続人が会社役員となっている会社の従業員等)を言います。
 この改正は、平成30年4月1日以後の当該法人等の役員の死亡に係る相続税について適用されます。
 但し、同日前に設立された当該法人等については、平成33年4月1日以後の当該法人等の役員の死亡に係る相続税について適用され、平成30年3月31日以前の期間については上記(2)②の2分の1を超える期間に該当しない、となっています。
 しかし、平成30年4月1日から同族理事を2分の1未満に見直しておく必要があるかと思われます。

●その他の改正項目
(1)農地等に係る相続税・贈与税の納税猶予制度については、①貸付けられた生産緑地その他一定の農地の貸付にも納税を猶予する。また、②三大都市圏の特定市以外の生産緑地について、営農継続要件を終身(現行:20年)とする等幾つかあります。
 また、(2)相続税の申告書の添付書類については、戸籍謄本のコピー、法定相続情報一覧図の写しでもよくなります。
 前者の適用は、都市農地の貸借円滑化に関する法の施行の日以後、後者の適用は、平成30年4月1日以後に提出する申告書からとなっています。

 


<情報提供:ゆりかご倶楽部>

2018年04月26日

平成30年度税制改正 資産課税編1


先ず、事業承継税制と小規模宅地等の特例の改正について、以下その内容を概観してみます。

●事業承継税制の特例の創設 現行の事業承継税制(非上場株式の贈与税・相続税の納税猶予)に加え特例措置を創設しました。その内容は次のとおりです。

(1)適用要件の緩和①全株式が納税猶予の対象となる。②猶予割合100%。③雇用要件は弾力化され、5年後に経営の悪化等で平均8割の要件を満たさなくなっても、一定の要件を充足すれば納税猶予の期限は確定しない。④代表者以外の者からの株式贈与も対象とする。⑤承継者が贈与者の推定相続人以外の者でも一定の要件を満たせば相続時精算課税の適用を受けることができる。⑥承継人は最大3人まで可、その全員が代表権をもつ。

(2)環境変化に対応した負担軽減 経営環境の変化を示す一定の要件を満たす場合において、5年経過後に非上場株式の譲渡、合併により消滅、又は解散を余儀なくされた場合には、その時の株式を相続税評価額で再評価して贈与税額等(贈与、相続、遺贈を含む)を計算し、当初の猶予税額を下回る場合には、その差額を、免除する(譲渡、合併の場合には制限あり)。 この特例適用は、平成30年1月1日から平成39年12月31日までの間の贈与等です。しかし、適用可否の需要な点は、平成30年4月1日から平成35年3月31日の5年間に一定の承継計画を都道府県に提出、かつ、経営承継円滑化法の認定を受けていることが前提となっていることです。

 

●小規模宅地等の特例の見直し

(1)持ち家に住んでいない者に係る特定居住用宅地等の特例の対象者の範囲から、次の者を除外する。

①相続開始前3年以内に、その者の3親等内の親族又はその者の同族会社等が有する国内にある家屋に居住したことがある者。

②相続開始時において居住の用に供していた家屋を過去に所有したことがある者。

(2)貸付事業用宅地等の範囲から、相続開始前3年以内に貸付事業の用に供された宅地等(相続開始前3年を超えて事業的規模で貸付事業を行っている者が当該貸付事業に供しているものを除く)を除外する。 

適用は平成30年4月1日以降の相続又は遺贈からです。なお、(2)は、同日前から貸付事業の用に供されている宅地等には適用されません。

 

<情報提供:ゆりかご倶楽部>


2018年04月26日

《コラム》法定相続情報証明制度とは


◆所有者不明の不動産が増加中
 近年、相続が発生しても新しい所有者へ所有権を移転させる相続登記が行われず、所有者不明の不動産が増加していることが社会問題になっています。この問題を解消するため、様々な取り組みが検討されていますが、昨年から始まった「法定相続情報証明制度」もそのひとつです。

◆法定相続情報証明制度とは
 被相続人が死亡し相続が発生した場合の手続きは、相続登記だけに限りません。金融機関における預貯金・有価証券の名義変更や払戻手続き、保険請求手続きなど、相続にまつわる手続きは様々です。これらの各種手続きを行うためには、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本など、相続関係を証明する資料一式を、手続きの都度原本で提出しなければならず、相続人にとって大きな負担になっていました。
 こうした負担を軽減し、相続登記を促進しようと始まったのが「法定相続情報証明制度」です。相続人が法務局に相続関係を証明する戸籍謄本や必要書類とともに、相続関係を一覧に表した図(法定相続情報一覧図)を提出すると、以降は、法務局がこの図の写しを戸籍上の法定相続人の証明書として発行してくれるというものです。この証明書を各種相続手続きに利用することにより、相続人や金融機関等の負担軽減につながることが期待されます。

◆今後さらなる改善の見込み
 しかしながらこの証明書、現状は被相続人の子について、実子・養子の別や続柄については基本的に記載せず「子」としてのみ表示されている点など、情報量の不足も指摘されており、現在、記載内容等の見直しが進められています。既に法務省による意見募集が終了しており、今後さらなる改善が見込まれています。
 戸籍謄本など相続関係を証明する資料一式が必要な相続手続きを、複数の機関で行う場合に、できるだけ費用をかけず、かつできるだけ短期間で行えるのがこの制度のメリットです。制度を有効活用し、相続手続きの負担をできるだけ最小限にとどめたいですね。


<情報提供:ゆりかご倶楽部>

2018年04月17日

ふるさと納税 中間仮計算のススメ


◆過熱するふるさと納税-規制もあれば抜け道も!?
 2017年4月1日付で総務省は各自治体に対し、「ふるさと納税の返礼品の価格について、寄付額の3割までに抑えるよう要請」し、「商品券や家電製品といった返礼品は換金しやすさや地元産かどうかを問わず、全面的に控えるよう求め」ました。これで一部自治体の目玉だった商品券や各種ポイントも返礼品から消えることとなりました。
 「税法の縛りがあるところに合法的な節税の抜け道あり」ではありませんが、頭を使って考える人はいるものです。自社が提供するふるさと納税の申込サイトから寄附すれば、自社のポイントを付与し、他の申込サイトよりもポイント分得するという売りを打ち出したところが出てきました。ポイントは、自治体から納税者に付与されるのではなく、ふるさと納税の申込サイトを運営する会社から付与されるので、総務省要請も対象外ということなのでしょう。

◆ふるさと納税限度額の計算
 持ち出し(=寄附金が控除限度額を超えてしまうこと)なくふるさと納税をするためには、控除限度額の把握が必要です。ふるさと納税導入当初は、総務省や千葉県などのウェブサイトで提供されていた表形式のものしか限度額を予測するものはありませんでした。しかしながら、いまは各種ふるさと納税の申込サイトでシミュレーションコーナーが設置され、より精度が高く計算できるようになってきています。

◆ふるさと納税中間仮計算のススメ
 限度額ギリギリまで得するよう12月の年末調整後に駆け込み的なふるさと納税を推奨する話も聞きますが、今回は、いまの時期に、中間仮決算的準備をお勧めします。
 行うべきことは、医療費の領収書の金額集計です。扶養家族や住宅ローン控除などはほぼ例年通りのことが多く12月末時点の予測は簡単です。一方、医療費控除は集計してみるまで金額がわかりません。
 ある税理士は毎年12月にその年の納税限度額を計算し、限度額目一杯使い切ることを年中行事としていました。しかしながら、12月に突発的な仕事で、医療費控除の予測ができぬまま医療費控除を最大限の200万円としたうえでふるさと納税限度額としました。そして、翌年2月に自身の個人所得税の確定申告をしてみて数万円分のふるさと納税限度額を逃してしまったことに気づいたそうです。その反省から「今年は中間仮計算をする」と宣言していました。

(情報提供 ゆりかご倶楽部)

2017年10月21日

(後編)国税庁:空き家の譲渡特例通達の趣旨説明を公表!


(前編からのつづき)

 例えば、相続人所有の敷地に被相続人が所有し居住していた家屋の場合、相続人が相続により、その家屋を取得したとしても、取得したのは家屋のみであるため、適用はないと説明しております。

 また、相続した家屋・敷地が店舗併用住宅の場合、適用対象は被相続人の居住用部分のみとなり、相続の時後の増築等により、被相続人居住用家屋の床面積が増減した場合でも、相続開始直前の被相続人居住用家屋の床面積を基に特例の対象となる居住用部分を判定します。
 なお、店舗兼住宅であっても、居住部分がおおむね90%以上である場合は、家屋・敷地の全部を居住用部分として取り扱える旨を明らかにしており、被相続人居住用の家屋・敷地の譲渡が、相続のときから譲渡のときまで事業用、貸付用、居住用に使われていないことがこの特例の適用要件とされているため、「一時的な利用」であっても要件を満たさないとしております。

 また、貸付用には、賃貸借により有償で貸し付けられているものばかりでなく、使用貸借により無償で貸し付けられていたものも含むとしておりますので、該当されます方は、ご確認ください。



(情報提供 ゆりかご倶楽部)

2017年08月16日

(前編)国税庁:空き家の譲渡特例通達の趣旨説明を公表!


2016年度税制改正において、相続した空き家を一定要件のもと譲渡した場合に、居住用財産の譲渡所得の特別控除に該当する譲渡とみなして同控除を適用する特例が創設されました。

 そして、国税庁は、その取扱いを定めた通達の主要改正事項の趣旨説明を公表しました。
 同特例は、相続開始直前に被相続人のみが居住していた1981年5月31日以前に建築された家屋(区分所有建物を除く)及びその敷地で、相続の開始日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡すること、譲渡価額が1億円を超えないこと、譲渡をする家屋・土地は、相続の時から譲渡の時まで事業用、貸付用、居住用に使われていないことを適用要件に、居住用財産譲渡の場合、3,000万円の特別控除が適用できます。

 通達の趣旨説明をみてみますと、特例は、家屋とその敷地の両方を相続等により取得した場合に限り適用され、被相続人居住用家屋のみ又は被相続人居住用家屋の敷地等のみを取得した場合は適用されないことになります。

(後編へつづく)

 



(情報提供 ゆりかご倶楽部)
 

2017年08月16日

子ども・子育て拠出金とは


◆全額事業主負担の子ども・子育て拠出金
 子ども・子育て拠出金は平成26年度までは児童手当拠出金と呼ばれていました。
 社会保険料(健康保険及び厚生年金保険)は労使折半負担となっていますが、子ども・子育て拠出金は全額企業が負担します。被保険者からは徴収しません。
 平成29年度からは0.23%となりました。被保険者の厚生年金保険の標準報酬月額に料率を乗じます。標準賞与額にも同じ料率がかけられます。
 例えば標準報酬月額が20万円の人は20万円×0.23%=460円となります。金額は大きい額ではありませんが、平成28年度は0.20%でしたから上限とされている0.25%までは今後も上がる事でしょう。
 被保険者に子どもがいるかいないかは関係なく厚生年金の加入者は全員が拠出の対象になっています。

◆拠出金は何に充てられているか
 拠出金は児童手当のみに使われている印象がありますが、地域子ども・子育て支援事業や平成28年4月から新設された仕事・子育て両立支援事業にも充てられています。
 各内容を見てみます。
①児童手当事業・・・・市区町村に住民登録があり、中学校終了前までの児童を養育している人で下記の条件に該当する方に支給されます。
ア、児童が国内に居住している
イ、児童が養護施設入所や里親に委託されていない
ウ、扶養親族数に応じて所得で622万円から812万円までの限度額があります。扶養親族数6人以上は812万円に1人38万円を加算します。支給額は3歳未満で1人月1万5千円から中学生1人月1万円の範囲できめられます。所得制限を超えていても1人当たり5千円が支給されています。
②地域子ども・子育て支援事業・・・・放課後児童クラブ、病児保育(事業費及び整備費)、延長保育事業等
③仕事・子育て両立支援事業・・・・企業主導型保育事業(運営費及び整備費)、企業主導型ベビーシッター利用者支援事業等


(情報提供 ゆりかご倶楽部)
 

2017年08月08日

(後編)国税庁:2015事務年度の相続税の調査事績を公表!


 (前編からのつづき)

 申告漏れ相続財産の内訳をみてみますと、現金・預貯金等が1,036億円(前事務年度1,158億円)で全体の35.2%を占めて最多となり、続いて土地が410億円(同414億円、構成比12.4%)、有価証券が364億円(同490億円、同13.9%)、家屋が64億円(同54億円、同2.2%)の順となり、その他(不動産、有価証券、現金・預貯金等以外)が1,071億円(同1,125億円、同36.3%)となりました。

 一方、申告・納税義務があるのにもかかわらず申告しない無申告事案については、前事務年度より0.6%少ない863件の実地調査を行い、そのうち655件(前事務年度比0.9%減)から824億円(同6.0%減)の申告漏れ課税価格を把握し、53億円(同26.2%減)を追徴課税しました。
 そして、1件当たりの申告漏れ課税価格は9,543万円となり、相続税調査全体の1件当たり申告漏れ2,517万円の約3.8倍にのぼりました。

(注意)
 上記の記載内容は、平成29年4月7日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。




<情報提供:ゆりかご倶楽部>

2017年06月10日

(前編)国税庁:2015事務年度の相続税の調査事績を公表!


 国税庁は、2016年6月までの1年間(2015事務年度)の相続税の調査事績を公表しました。
 それによりますと、2013年中に発生した相続を中心に、申告額がありながら無申告と思われるものなど1万1,935件(前事務年度比3.8%減)を実地調査しました。
 そのうち81.8%に当たる9,761件(同3.8%減)から3,004億円(同8.8%減)の申告漏れ課税価格を把握し、加算税80億円を含む583億円(同12.9%減)を追徴課税しました。

 実地調査1件当たりでは、申告漏れ課税価格2,517万円(前事務年度比5.3%減)、追徴税額489万円(同9.5%減)となりました。
 また、申告漏れ額が多額だったことや、故意に相続財産を隠ぺいしたことなどにより重加算税を賦課した件数は1,250件(同0.6%減)あり、その重加算税賦課対象額は458億円(同5.9%増)、重加算税賦課割合(重加算税賦課件数1,250件/申告漏れ等の非違件数9,761件)は12.8%(同0.4ポイント増)となりました。

(後編へつづく)

(注意)
 上記の記載内容は、平成29年4月7日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。


<情報提供:ゆりかご倶楽部>


2017年06月10日

相続課税割合公表値を読む

◆基礎控除引下げの影響の予測と結果
 平成27年1月1日以後の相続から基礎控除額が60%に引下げられています。27年中の相続税申告の事績が昨年末に公表され、その制度変更の影響がどう表れているか明らかになりました。
 亡くなられた方について相続税の申告がなされた割合は10年来4.1~4.4%で推移していたところ27年は8.0%と倍近い増加になっています。少し前までは、6%ぐらいを予測値としている情報が多かったところです。

◆公表結果値の概要
 死亡者数は年々少しずつ増加し、ここ10年来で2割ぐらい増えてはいるところ、前年比では1.4%程度の増にすぎませんが、課税申告書提出件数は83.2%もの増になっています。
 前年比の申告書の提出を要する課税実増加件数は46,804人で、それに対応する実増加申告財産額は32,276億円で、相続申告増加1件当たり約6,900万円です。実増加税収は4,208億円で、相続申告増加1件当たり約899万円です。

◆都道府県別比較をしてみると
 課税申告割合、全国平均の8%に対し、都道府県別に高い方のベスト3をみると、東京15.7%(都内23区では16.7%)、愛知13.8%、神奈川12.4%です。東京の場合は、6.4人に1人の割合で相続課税がなされています。低い方のベスト3は、秋田2.2%、青森2.9%、鹿児島3.1%です。秋田の場合は、45.5人に1人の割合で相続課税されています。

◆変化の波と身近な経験的印象
 課税対象となる割合の高い地域が、その割合の増加の程度も高そうに思ってしまいそうですが、課税対象割合の増加率を追ってみると、その高い地域の増加変化率は東京が最低で162%、次いで京都163%、大阪164%で、これがワースト3です。
 逆に、増加変化率のベスト3は、富山246%、秋田244%、青森223%です。絶対数では、大都市圏で課税対象者割合が高いと言えるものの、基礎控除引下げの煽りを烈しく受けて変化の波に呑まれているのは過疎的地方なのかもしれません。




<情報提供 ゆりかご倶楽部>

2017年04月20日

特定公社債の利子(H28年~)

 ●利子所得も申告可能に
 公社債等の利子については、昨年までは特定の国外債を除き、支払時に「所得税及び復興税15.315%・住民税5%」による源泉徴収が行われ、この源泉徴収によって納税が完了でした(源泉分離課税)。
 しかし、平成28年1月1日以後、特定公社債等の利子所得については、申告分離課税による確定申告を選択することができるようになりました。
 また、同族会社が発行した社債で、その同族株主等が受領するものの利子については、支払時に「所得税及び復興税15.315%・住民税なし」による源泉徴収が行われたのち、当該利子所得は総合課税の対象となり確定申告を要することになりました。

●特定公社債等の利子とは
 ちなみに、特定公社債等の利子は、①特定公社債(国債、地方債、外国の国債及び地方債、上場公社債、公募公社債その他の特定の公社債)の利子、②上場公社債投資信託の収益の分配金及び公募公社債投資信託の収益の分配金等からなっています。個人投資家の運用対象の大部分がこれに該当します。
 一方、一般公社債等の利子とは、特定公社債等の利子以外の利子です。

●利子割と配当割
 住民税においては、昨年まで、利子については「利子割」、そして、配当(特定配当等)については「配当割」、という名称で特別徴収(源泉徴収)をしていました。 
 しかし、平成28年1月1日以後における特定公社債等の利子に対する住民税5%は、利子割ではなく、配当所得に対する住民税5%と同様に、「配当割」と定義されました。
 理由は、特定公社債等の利子が上場株式等の配当等に包含され、結果、申告分離課税が選択できるようになったことによるものと思われます。

●申告分離による源泉税の取扱い
 平成28年1月1日以後は、特定公社債等の利子所得と特定の譲渡により生じた上場株式等(特定公社債等も含む)の譲渡損失との損益通算が可能となったことから、申告分離課税を選択し確定申告をすることで、場合によっては源泉徴収された税金(配当割含む)を還付することもできます。
 なお、特定公社債等の利子等についても、特定口座の源泉徴収選択口座に受入れができ、その口座内での通算が可能です。

 

(ゆりかご倶楽部)

 

2017年03月02日

高石市空き家バンク制度

 高石市が実施してます「空き家バンク制度」についてです。相続で親が住んでいた家を取得したが、使い道がない、売ろうにも買い手がない、空き家になると固定資産税も高くなる・・と社会問題ともなりつつある空き家問題。それを解決すべく、行政(市役所)が空き家の登録と情報提供、さらには補助金(最高60万円)まで出すという制度です。


大阪府にも「大阪の空き家 相談・情報サイト」という制度のポータルサイトがありまして、そこで他市町村の同様の制度をざっと見たところ、高石市の「空き家バンク制度」は市町村の規模の割にまだ充実している様に思いました。昭和40年代、50年代築の一軒家、平成築の比較的新しいマンションの売り物件の他、一軒家の賃貸物件も登録されていました。


平成28年税制改正では「相続した空き家を売った場合の譲渡所得の3000万円特別控除」も創設されましたが、いずれにしても買う側は、古い空き家はリフォームして使えるものなのか、取り壊して土地として利用価値があるのか、その費用対効果は、、をシビアに判断しなければいけませんね。すぐ売れずに空き家バンクに登録された物件が多いのだと思いますので、YAHOO不動産等の中古物件と比較し、まず中古相場を自分自身で把握するのも大事ですね。

 


2016年10月01日

「ふるさとチョイス」を体験して

 今回はふるさと納税を初めて「ふるさとチョイス」のサイトでやってみましたので、記事にしました。ふるさとチョイスとは民間会社が運営するふるさと納税のポータルサイトですが、2015年のふるさと納税約726万件のうちのの当該サイト経由によるものが約600万件ですから、今やふるさと納税の公式サイトの位置付けでしょうか。サイトはお礼品のジャンルから市町村を検索出来る仕組みになっていて、まるで通販サイトのようです。

ふるさとチョイス http://www.furusato-tax.jp/

私が寄付したのは、四万十町ですが5000円の寄付で「コロンブスの産みたて茶卵」6個×5パックのお礼品がもらえます。

このサイトでは、ワンストップ特例制度(確定申告しなくてもよい制度)の選択、寄付の方法(郵便振替かクレジットカード決済)の選択も出来、クレジット決済の場合はあっという間に寄付完了です。又、寄付先の市町村への寄付の使い道の希望やコメントも送信することも出来ます。

ただ、サイトを見て残念に思うのは肝心の市町村の紹介の欄がお粗末で小さい地図しか載ってません。これでは、市町村に寄付するというよりお礼品を高く購入?しているような感覚になりますね。自分のふるさとである市町村への寄附、以前に訪問してお世話になったことがある市町村への寄附、あるいは寄付を通じてその市町村に興味を持ち第二のふるさとのように思う・・というのがふるさと納税の本来のねらいのはずですから、行き過ぎた商業主義やお礼品による寄付金の奪い合いは慎むべきだとは思います。自分がふるさと納税を体験しての感想です。


2016年09月28日

平成29年度税制改正に関する要望(日本税理士会・日本税理士政治連盟)

平成28年8月、日本税理士会連合会、日本税理士政治連盟から平成29年度税制改正に関する要望が出ました。
最重要項目は以下の通りです。
〇平成29年度最重要建議・要望項目

1.【災害対応税制】「災害税制に関する基本法」を立法化について

2.【中小法人税制】①事業税の外形標準課税は中小法人には適用しないこと。②欠損金の控除限度額の縮減は中小法人には適用しないこと。

3.【消費税】事業者の事務負担と徴税コスト等を考慮し消費税制のあり方について検討すること。

4.【相続税・贈与税】取引相場のない株式等の評価の適正化を図ること。

この4つの最重要項目が27項目の具体的要望に分けられますが、資産税関連では、「取引相場のない株式等の評価の適正化」として

①相続開始前3年以内に取得した土地等と建物等についても通常の評価とすること(時価評価しない)

②評価会社が退職給付債務を負っている場合は一定額を負債とすること

③土地保有特定会社等の特殊な評価方法を見直すこと

が要望されました。

取引相場のない株式等(非上場株式等)は上場株式等と比較し相続税評価額が割高となる場合が多く、中小企業の事業承継のネックともなっています、ですので、これと併せて「事業承継の場合の非上場株式等に係る相続税・贈与税の納税猶予制度について適用要件をより一層緩和し、納税者がもっと利用しやすい制度にすること」も要望されました。この制度は事業承継の際の株式移転には上述のネックを解決する有効な制度ではありますが、要件が多すぎて、また、利用後の取り戻し課税のリスクもあるので、まだまだ普及していない制度であります。

 

2016年09月05日

地籍調査、大阪府は進ちょく度10%

◆「地籍調査」とは?
 「地籍調査」という言葉を耳にしたことがありますでしょうか? これは、市町村等が、一筆(土地登記簿の一区画)ごとに土地の「所有者」・「地番」・「地目」を確認し、所有者の立会いのもとで「境界」を確定する国土調査法に基づく事業のことです。
 この国土調査法という法律が成立したのは、昭和26年。当時の登記所には、土地の現況に関する資料として「土地台帳」と「付属地図」(明治時代に地租改正を行った時の調査資料)が備え付けられていましたが、さすがにこの時代の測量技術を基としているので不正確なものでした。そのため、戦後の復興に資するという観点から、正確な地図へ置き換えていこうというのが、「地籍調査」事業の目的でした。

◆「境界確定」の他にもメリットが多い
 もちろん、今日においても「地籍調査」はその意義を失っておりません。土地の位置(経度・緯度などの座標情報)や面積の正確な地図が公に整備されていれば、土地の売買や相続の際に生ずる「境界争い」などのトラブルを未然に防ぐことができます。
 また、公共インフラの整備や用地買収、災害時に土地の形質が変わった場合の復旧にも、その情報を役立てることができます。

◆都市部の地籍調査進捗率は24%!?
 このようなハッキリしたメリットがあるにもかかわらず、「地籍調査」は、65年近くの間、なかなか進んでいません。
 国交省HPによれば、平成27年度末現在の全国の進捗率は51%。地域差が顕著に表れており、特に権利関係が複雑な都市部では24%(東京は22%)しか進んでいません
 ◎進捗率ベスト3:沖縄99%、福岡98%、青森93%
 ◎進捗率ワースト3:京都8%、三重9%、大阪10%
 実施主体の市町村は、人員不足や財政問題を抱え、住民側も土地の権利関係について「寝た子を起こしたくない」という意識もあり、調査は難しいものになっています。

◆「公図」と「現況」のズレも調査
 都市部の地籍確定率24%という数字は、都市部の「公図」の約3/4はあまり参考にならないことを意味します。これではいけないということで、全国の都市部の地籍整備を推進するため、国交省などが協力し「都市再生街区基本調査」(H16~H18)が実施されました。この調査では、公図の角の点に対応すると考えられる現況の座標を、「地籍調査」の基礎情報として測量しています。

 

<情報提供:ゆりかご倶楽部>

2016年08月23日

金融機関の「暦年贈与サポートサービス」

◆「暦年贈与サポートサービス」の照会事例
 国税庁のホームページには、「事前照会に対する文書回答事例」が公表されていますが、平成28年3月に気になる照会事例が掲載されました。ある金融機関が照会した「暦年贈与サポートサービスを利用した場合の相続税法第24条の該当性について」というものです(東京国税局回答)。
 この「暦年贈与サポートサービス」とは、その金融機関の預金口座を有する3親等以内の親族関係にある複数の個人を対象として、その個人間の「贈与の意思及び贈与金額の確認」を行い、「双方合意が存する場合」に限り、「贈与契約書の作成」や「預金の振替」等をサポートするサービスなのだそうです。このサービスに基づく贈与は、相続税法の「定期金給付契約に関する権利」に該当するのかというのが照会の内容でした。

◆「定期金給付契約に関する権利」とは
 「定期金給付契約に関する権利」とは聞き慣れない言葉ですが、いわゆる「年金受給権」を指します。たとえば、AがBに対して5年間現金100万円ずつ贈与する場合、これを「その1年ごとに個別に100万円ずつ贈与する」と見ることができれば、各年で110万円の基礎控除が適用できますので、贈与税は課税されません。ただ、当初より5年間(毎年)現金100万円ずつを贈与するつもりであるならば、これは5年分の「定期金(年金)を受給する権利」を取得したと認定され、一時に贈与税が課税される恐れがあります。この場合に、贈与を受けたものとみなされる金額は、次の①~③のいずれか多い金額とされています。
(有期定期金の場合)
① 解約返戻金の額
② ①に代えて一時金を受けることができる場合…一時金
③ 1年間で受けるべき金額×残存期間に応じる予定利率の複利年金現価率

◆「直ち」には定期金給付契約と認定せず
 そのため、現金の「連年贈与」を行う場合と同様に、このサービスが「定期金給付契約に関する権利」に当たる余地があるか心配だ…ということなのです。東京国税局の回答は、このサービスを用いた場合には、贈与の都度の確認があるため、「直ちに」は定期金給付契約とは認定しないとのことのようです(契約の内容や個別の状況などで判断する余地はあるのでしょうかね…)。

 

<情報提供:ゆりかご倶楽部>

2016年08月11日

遺言と遺産分割協議

◆年々増える遺言作成件数
 相続・遺言に対する関心は年々高まっており、平成26年1月~12月に全国の公証役場で作成された遺言(公正証書遺言)は10年前から約4万件も増加し、ついに10万件を超えました。家庭裁判所で扱われた遺産分割事件も同様に増加傾向にあり、こうした背景も影響していることがうかがえます。故人の遺志をできるかぎり尊重したいものですが、遺言を書いたときと相続時では家族の状況が変わってしまうということもあります。では、遺言の内容と異なる遺産の分割をすることは可能なのでしょうか。

◆遺言と違う遺産分割は可能?
 相続人の間で遺産分割の方法を話し合うことを遺産分割協議と言い、その結果を書面にしたものが遺産分割協議書です。
 判例では、①遺言によって遺産分割協議が禁止されている場合、②遺言執行者が選任されている場合を除き、遺言と異なる内容の遺産分割協議をすることは事実上認められています。実際、遺言と異なる遺産分割の方法を協議することは珍しくありません。
 しかし、だからと言って全て遺産分割協議書が遺言に優先する、という意味ではありません。遺言の内容によっては注意が必要です。

◆遺産分割の方法が指定された遺言
 過去、最高裁では、特定の財産を特定の相続人に相続させる内容の遺言の場合、遺言者の死亡によって、財産は直ちに確定的に相続人に帰属するとした判決が行われました(平成3年4月19日最高裁判決)。「特定の財産を特定の人に相続させる内容」とは、たとえば「長男○○に埼玉県××の土地を相続させる」というのがこれにあたります。この場合、その後に行った遺産分割は本来の意味での「遺産分割」ではなく、相続人間の取引として財産が移転するものとされています。
その結果、不動産の相続登記を行う際、遺産分割協議の結果をすぐさま登記できず、まずは「遺言に基づく登記」をした後、「相続人間の取引の登記」の二段階で申 請しなければならないなど、相続事務に支障をきたすことがあります。こうなると手続き費用も手間も二重にかかってしまいますので、注意が必要です。

 

<情報提供:ゆりかご倶楽部>

 

2016年07月05日

配偶者の相続分(民法改正案)

 6/21、政府の法制審議会の民法部会にて民法上の配偶者の相続分(相続人が配偶者と子供の場合)を現行の1/2から2/3に引き上げる案がまとまったようです。


婚姻期間が20年または30年以上等の条件が入るようですが、これが決まると相続税法の配偶者の税額軽減も拡大されることが予想され、配偶者のいる相続は納税者有利となりますが、自宅とその敷地が遺産の大半を占めるような相続については遺産分割に骨を折ることとなりそうです。配偶者受取人の生命保険も代償分割に役立ちそうです。


平成29年中に国会提出を目指しているようです。

 

2016年06月22日

名義財産

 相続の際の名義財産、贈与の認定の局面において「真正の所有者」は誰なのかが問題となる場合があります。形式と実質から総合的に判断することになりますが、下記コラム4つ目の車両の裁決例は実質が正しく判断された裁決例だと思います。


◆名義人課税が原則という見解 不動産、株式等の名義の変更があった場合において対価の授受が行われていないとき又は他の者の名義で新たに不動産、株式等を取得した場合においては、これらの行為は、原則として贈与として取り扱うものとする。 これは、贈与に関する税務通達です。

◆名義借りゆえに贈与課税しない場合 原則は名義人課税だけれど、必ずしも杓子定規にはしません、という次のような取扱通達もあります。1.これらの財産の名義人となった者(その者が未成年者である場合には、その法定代理人を含む。)がその名義人となっている事実を知らなかったこと。2.名義人となった者がこれらの財産を使用収益していないこと。

◆名義借り財産は相続財産 贈与は合意により成立する契約によって財産移動が起きるので、合意形成のない場合は、名義者への所有権移動が起きず、名義借り財産は、名義を借りた者の所有財産のままです。 相続財産とされる名義預金(未成年者の子への親からの資金移動は親権者の行為なので通常は名義借り預金とはならない)などは、その代表例です。 その他、名義土地や名義株式、名義車両船舶などというものも存在し得ることになります。

◆名義借り車両という裁決判断 親が子供の名前で自動車を購入して、使用していたので、子供に対して課税庁が贈与課税をしたケースにおいて、名義の借用をさせただけで贈与の意思も事実もなく、課税される謂れはないと主張して係争になった事例があります。 審判所は、①車両の有利購入条件を満たすための名義借り購入であり、②下取り車両も親のもので、本体代金も親が支払い、③子は購入時の車種選定に関与しておらず、④購入車両は親の自宅で保管され、名義貸しの子は日常的に本件車両を使用しておらず、⑤利用もしない者に対して車両を贈与するとは考え難く、⑥贈与の事実を疑わせる事情がある、として処分取消としました。 また、係争中に親は、本件車両を売却して同売却代金を受領し、新たな車両を購入しており、これは正に所有者らしい振る舞いだ、と評しています。


<情報提供:ゆりかご倶楽部>

 

2016年06月06日

不動産の権利証 紛失について

 この度、舛行税理士事務所がエッサム主催のゆりかご倶楽部に入会し、情報配信を受けることが可能になりました。このブログにも面白いものをご紹介していこうと思います。ご参考にどうぞ。


《コラム》不動産の権利証 紛失で相談窓口

 過日、法務省は、熊本県を中心に相次ぐ地震で家屋などが倒壊し、不動産の権利証を紛失した場合の相談窓口を設けた、との新聞報道がありました。
 その内容はこうです。
 権利証を紛失しただけで所有権を失うことはない。登記には印鑑証明書などの本人確認資料も必要で、不正な登記がされる可能性は低い。不正登記の予防のため、申出をしておけば他人から登記申請があった場合に通知を受け取れる「不正登記防止申出制度」の利用を求める。

◆権利証の本質
 権利証(法令上は「登記済証」又は「登記識別情報」)は、不動産の権利(所有権)を持っていることを証明するものですが、手形や小切手などの有価証券と違って、権利証の中に権利そのものが付着しているわけではありませんので、それだけで権利が転々と流通することはありません。
 法務省の言う通り、本人なりすまし等で売買できる場合の条件は極々限られています。家の中に、「権利証」、「印鑑カード」、「カードの暗証番号」、「実印」がセットで置いてあって、それが盗難に遭い、本人なりすまし等の売主が出現したとしても、即一括現金決済に応じた買主が所有権移転登記の安全性を憂慮し、登記申請を司法書士に依頼、司法書士が売主の本人確認を厳重に行った場合には、やはり、なりすまし等の売買は難しいように思います。

◆注意喚起は買主側にも
 注意喚起は、権利証を紛失した人のみならず、買主が大きなリスクを負う場合もありますので、買主側にも必要ではないかと思います。
 というのも、このような本人なりすまし等の売買は偽装であり、有効な法律行為でないため、結果、登記も無効であることから、買主は善意の第三者であったとしても、真の所有者から権利の返還を求められれば、登記を戻さなければなりません。真の所有者は、訴訟費用と時間は掛かりますが、最終的に権利は戻ってきます。
 一方、買主は、本人なりすまし等の売主に対して損害賠償の請求はできますが、まず、売買代金が戻ってくることはないでしょう。
 以上のことから、買主側にも注意喚起(売主の本人確認は厳重に!)が必要かと思います。


(ゆりかご倶楽部5/31より)


2016年06月02日

公示価格(大阪府)

 不動産価格の公表価格のうち、国土交通省土地鑑定委員会が毎年3月に発表する「公示価格」をとりあげます。

公示価格は国土交通省のホームページでも見れますが、「地価公示・地価調査(基準地価)マップ」というサイト(大分市の㈲ライフ・エモーションというIT関連の会社が運営)があり、とても便利ですので紹介します。http://chika.m47.jp/

そのサイトを参考にし、今回は大阪府の公示価格を少し見ていきます。

2016年の大阪府1670地点の平均金額は(住宅地)142,009円(商業地)633,547円(工業地)105,444円。(その年の1/1の1㎡当たりの価格)

前年との比較では、(住宅地)上昇地点245下落地点560(商業地)上昇地点212下落地点45(工業地)上昇地点27下落地点38。

2012年からの市町村別の公示価格推移をざっと見ますと、天王寺区、浪速区、阿倍野区、中央区あたりが上昇傾向です。これらは市内の再開発地域ですね。

対して千早赤阪村、河南町、能勢町、豊能町あたりの市内から離れた地域は下落傾向にあります。

都市部のうち再開発地域が地価上昇、都市部から離れた地域が地価下落というのが、近年の大阪府の地価の動きといえます。

 

2016年05月06日

金銭の贈与

 昨年の国税庁の平成26年4月~平成27年3月までの贈与税調査公表によると、3949件の調査に対して3616件の申告漏れがありました。91.5%の割合で追徴課税となりました。

子が住宅を購入する際の親からの資金贈与の申告漏れも多かったようです。


贈与をする際は、①贈与契約書を作るといった形式要件と②もらう側(受贈者)の意思確認や受贈者がもらった財産の管理運用主体となる、といった実質要件が必要です。この②の実質基準がなされず、税務トラブルになるケースもよく見られます。

また、形式上は金銭の貸付けであっても、催促なしの出世払い等の返済や返済を一切しない場合は贈与とされますので、安易な資金の移動は禁物です。

 

2016年05月04日

平成28年度税制改正(資産税関係)

 平成28年度の税制改正は消費税軽減税率について与党協議が時間をとられたこともあり、全体として小粒な改正となった感があります。


今回は住宅・土地関係として「相続により取得した空家に係る譲渡所得の特別控除の特例」を取り上げます。
改正前からある居住用財産の特別控除3,000万円(措法35)の適用に今回、社会問題になってきている「空家」のうち一定の要件を満たすものを追加するというものです。


対象となる譲渡は相続時から3年を経過する年の12月31日までに被相続人の居住の用に供されていた家屋を相続した相続人が譲渡する場合です。その家屋が譲渡耐震性の無い場合は耐震リフォームして譲渡又はその家屋を除却した後にその敷地を譲渡する場合に適用があります。


主な適用要件として
①相続した家屋は昭和56年5月31日以前に建築された家屋(マンション等の区分所有建築物を除く)であって、相続発生時に被相続人以外に居住者がいなかったこと。
②譲渡をした家屋又は土地は相続時から譲渡時まで居住・貸付・事業の用に供されていないこと。
③譲渡価額が1億円を超えていないこと。
です。
平成28年4月1日から平成31年12月31日までの間の譲渡が対象となります。

 

2016年04月24日

記事もスタートしました。

 当センターWEBサイトの管理をしております税理士の舛行 信治(ますゆき しんじ)です。当WEBサイトにて相続に関連する記事を中心に投稿していく予定です。どうぞ、ご参考にしてください。

 

2016年04月17日